バスケとケンカと、はじまる恋と。【青峰大輝】

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黄瀬side





思わず本気になってボールを追ってしまった。









それでもとれなかったそのボールは、
体勢を崩した藍澤の手から放たれた。









スローモーションのように藍澤がゆっくりと倒れていくのが見えた。









藍澤の口が弧を描くのが見えた。









ゴールの方を仰ぎ見る。









ボールは綺麗な放物線を描いてゴールに吸い込まれていった。









…………すご。









ギャラリーからも「…すっげー」とか「あいつ誰だ？女バスか？」とか感嘆の声が聞こえてくる。









これはすごい。
まぐれだとしても、凄すぎた。









すごいっスね＿＿＿＿なんて、
振り向いた先には、









.









.









誰もいない









視線を下にずらすと、寝っ転がっている藍澤が見えた。









…なんだ。びっくりした。









「……………ちょっと、いつまでそこに寝っ転がってるんスか？」









声をかけても動かない。









嫌な予感がした。









近寄って顔を覗き込む。
…朝より顔色悪いじゃん。









揺さぶっても動かない。









＿＿＿＿＿＿＿こいつ、気絶してね？









「…あいつ大丈夫か？」なんて誰かが呟いた。









…なんで？………なんで、
だってさっき、あんなに『大丈夫だ』って言ってたじゃないっスか









.









.









＿＿＿＿＿＿＿＿あれ？オレ、今、









桃っちと同じ顔してる？









.









.









「………A、」









流石に異変に気付いたらしく、青峰っち含むバスケ部のみんなが駆け寄ってきた。









「…気絶、してるな。誰か、Aを運べるか？」


「…オレが、保健室まで、運ぶっス」









＿＿＿＿＿＿＿＿なんで、そんなことを言ったのか、オレにも分からない。









「…黄瀬、」









ああ、青峰っち、そんな顔しないで。
もしかして、青峰っち…









気付いてしまった彼の気持ち。









ごめん









ごめんね









でも、オレ、

ここだけは譲りたくないみたいなんだ。

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