第六十三話 母の愛情 ページ13
これを読んでアリスはあれって思ったことでしょう。そうです。本来ならば核を失った私から力と一緒にそれらはあなたに引き継がれるはずでした。でも私は・・・あなたにあなたの運命と、存在意義を引き渡すことができませんでした。これは、まだ幼いあなたにはあまりにも過酷でつらいことだから。
そう思うのは私のエゴです。ユーグスタクトの運命をユーグスタクトに知覚させないことが同時にどれほどの酷であるのかも正しく理解しながらもやはり教えることはできませんでした。
陣の中心で無垢な瞳を向けられたあの日から。
私はあなたのことが愛おしくて、何よりも大切な存在であると意識してしまうようになったのです。
本当はね、生まれたばかりのあなたにはちゃんとユーグスタクトの運命通り力も、存在意義も在り方もすべて刷り込まれていたの
でも私にはそのことがあまりにも耐えられなくて、あなたからその記録を消してしまったの。
なにも知らないあなたはすごく幸せそうで、何も心配のいらない日々を送ってくれた。
でも、無邪気な瞳を向けられるたび心の奥底ではこれでよかったのかと自問自答を繰り返してきました
でもきっとこれでよかったのかもしれません。
私が犯した罪はあまりにも重く決して許されることではない
それをあなたにまで背負わせたくはなかった
あのね、アリス。私たちユーグスタクトには本当は他者を愛するという感情は備え付けられていないの。それどころか感情という感情は殆どなかった
でも私には確かにあなたを愛しているという感情はあった
そしてあなたにも私を愛してくれているという感情は確かにあった
それはなぜだと思う？
それは私が感情を得てしまったから
そして力という記録全てを引き継ぐユーグスタクトの性能で私の感情という力もあなたに引き継がれたから
私は決して許されない行いに手を染めた
そしてそのせいであなたまで巻き込んでしまった
これから話すことはあなたにとってとても衝撃的な話となってしまうでしょう。それを読んであなたが私を許さないと思っても構いません。嫌いになってしまっても構いません。
これは一人の女の記録
これは優しい日々の記録
これは、厄災までの記録
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作者名：ストゥアート | 作成日時：2017年6月24日 22時
