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そんなことを考えてたらドアから津島さんが覗かれていた。
「二人ともここにいた。撮影始まるわよ」
「了解です。ついて来てAちゃん」
「……はい」
久しぶりだなこの感じ。
いや演じるのは葉月なんだけど。
スタッフさんに撮影入りますと言われて襟を正しながらカメラの前に立つ。
引退してだいぶ経つのにまだこの感覚を覚えてるのかと自分でびっくりする。
現場の中に入る。
忘れてないなと思った。
相葉さんの隣に立たせてもらって見学する。
まずはリハーサルをする。
ここでアングルや立ち位置を立体的に考えていくのだ。
「葉月ちゃんもうちょっと右にずれてくれる？」
「はい」
「それで木原くんは膨れ気味に右カーブして彼女に近付いて」
「……こうですか？」
「そうそう。いいよ」
監督やプロデューサーとやり取りをしていく。
ここの関係がよく影響を及ばすからね。
入念なリハーサルを終えて本番に入る。
普段友達だからあまり意識はしないけどこう引きで見たら葉月は美人だなと感じた。
とにかく美人。オーラがあって目を引く。
間違いなく彼女はスターになるべくしてなる人だ。
スターの栄光が強ければ強いほど影が濃くなる。
その影を支えているのが一般人の彼氏さん？どういう人なんだろ、興味がある。
「シーン1テイク1本番よーいスタート!」
カチンコが鳴る。
葉月の瞳の色が変わった。
冒頭のシーン。
オフィスでせわしなく働く人々。
そんな中葉月演じる主人公が溜め息を吐きながら一旦オフィスを出ようとするとそこに恋人役の上司がやってくる。
『ちょっと実紅』
『はい？何でしょうか今井さん』
葉月は名字を強調するように言う。
彼女を公私を別に分けたいという気持ちが伝わる。
今井さんは分かりやすく固まる。
連ドラでも葉月演じる実紅は結構ツンツンとズバズバと今井に申している。
でも今井はそれを物ともせずアプローチしていった結果、実紅は今井さんを好きになり両想い。
それで最終回となった。
それで今撮っているのは最終回後の世界。
その後の二人がどうなったかが今回の焦点だろうけど今の実紅がデレるか？と見ていて思う。
実紅『資料室行って参ります』
今井『……いってらっしゃい』
「カット！」
またカチンコが鳴った。
監督のオーケーが出た。
短いシーンだったけど一発で決めるのは流石だった。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年2月17日 8時
