１０８ Side Sho ページ24
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「僕ですか？確かに僕は櫻井ホールディングス全体には関われない立場で父にこの道を用意されました。それは事実です。でも僕はただ競馬が好きで、大事な仲間たちと勝ちたいという思いの方が強いんです。だったらその場所はどこでも良いんじゃと思われるかもしれませんが、さっきも言ったようにこの櫻井RHも大好きなんです。だからこれからは少し自由をもらってこれまで通りにしたいと思ってます。元々僕はビジネスも気にしてて何が何でも二宮や松本ってわけでもないですし」
とにかく話す。多弁になることで相手の勢いを削ぐ。
よくやることだ。
「僕は……僕も競馬が好きですよ？実の父が馬主をやってると知って驚いたぐらいですよ。だからそこに関わって独立してオーナーブリーダーになりたいと考えたんです。でも、やっぱり甘いですかね。武岡さんも実のところそう思ってたんでしょう」
「まあ……ね」
武岡さんは苦笑する。
「目標を大きく持つのは立派だと思うよ。でも現実的に考えるとね。僕が君に色々な人を紹介したのはより考えてもらうためだったんだけど。櫻井くんの場合家のことも複雑に絡み合っちゃって。そこは反省してる」
武岡さんの心の内が少し見えた。
この方は基本優しいんだよね。
「競馬が好きなら余計うちにスカウトしたくなりました。うちは社員全員が競馬好きなんで」
彼の計画が進行中なのは分かってる。
だけど少しでも余所を見れば勉強になると思う。
俺も学生時代に海外で馬を見たことが自分の基盤となっていると思ってるし。
「……考えさせて下さい」
樋口さんはこちらが見ても分かるぐらい肩を落としていた。
俺を評価してくれるのは嬉しいが、ね。
「考えるだけ考えて下さい。僕はあなたがどんな形であれ来てくれることを願っています」
「……失礼します」
お見送りは結構ですと立ち上がって樋口さんが代表室を去る。
「……櫻井くんは怖いわあ」
彼が出た後武岡さんが言う。
「武岡さんには言われたくありません」
「そうか？俺優しいやろ？」
「本当に優しかったら自分を優しいって言いません」
さっきもしたなこんなやり取りと思う。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年4月22日 9時
