・ ページ16
・
『川上さん教えて下さい。父と母は何で死ななければいけなかったんですか？』
『さすがに村井先生のお嬢さんでも教えられないことがある』
『どうしても知りたいんです』
『あのね。君はご両親に大事にされて育ってきたんだろう？だったら知らない方がいい。世の中にはね知らない方が幸せなこともあるんだよ』
この人は普段軽薄な所が強いが演技は出来る。
力量はあるから顔も相まって人気の俳優なのだ。
『だけどこのまま両親がどうして死んだのか分からないまま生きてくことは出来ません』
『ご両親は悲しむだろうな』
『勝手に判断しないで下さい』
橋田さんは私ににじり寄った。
『ふーん。はっきり言う所は奥さん似だな。嫌いじゃないよ』
カットの声がかかる。
こんな感じに撮影が進み、重要なシーンも撮って一日が終わる。
「飲みに行こうよ」
スタジオから出て声をかけられる。
「行きませんよ」
「どうして」
「どうしてもこうしても行きたくないからです」
「彼氏いんの？」
「ご想像にお任せします」
「ふーん」
彼を振り切ってスタジオを出る。
そのスピードで雅紀くんの車に乗る。
「うん、お疲れ」
「あの人彼女いんじゃないの」
これじゃ以前と変わらない。
私はああいうふうに近寄られて妥協してしまったのだ。
「別れたんじゃ？Aと付き合っててもつまらないから別の女に手を出してみたけど、みたいな」
「男の人ってそんなもん？」
「見た目しか見てない人はそうかもね。男も女も」
平然とした口調の裏を私はひそかに感じ取る。
「櫻井先生は大丈夫。ちゃんとAをAとして見てるもん」
「うん」
先生はまず人として信頼できる。
あの人は信用できなかった。
「帰ろっか。家でしょ」
「うん」
明日は少し遅めの出だがだからこそゆっくりしときたかった。
スマホを見る。
また作り置きありがとうというメッセージ。
お仕事お疲れ様ですと打つ。
明日もあの人に会うかと思うと思いやられる所がある。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユタカ(プロフ) - さくさん» お熱いコメントありがとうございます！サクラサクラの頃から読んでいただいてるなんて有りがたき幸せです。月水晶の番外編ぜひお楽しみ下さい。ありがとうございます。 (2019年5月2日 10時) (
レス) id: a11f8fafa4 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - (続)他の作品もですがサクラサクラと月水晶を何度も読み返していたのでこの続編はめちゃめちゃに嬉しいです！続きも楽しみにしています！長々と失礼しました笑 (2019年5月2日 10時) (レス) id: fce84e79e3 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - 初コメです！サクラサクラからずっとユタカさんの作品を読んでいました！トゥザで次は、、、というのを見た時にまさか！？と思ってワクワクしていた所に通知が！嬉しすぎてコメントしてしまいました！(続) (2019年5月2日 10時) (レス) id: fce84e79e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユタカ | 作成日時：2019年5月2日 10時
