自分を不幸にしても逃げられない【ローザッテ】2 ページ4
図書館、と復唱する。まずい。いきなりそこへ辿り着くとは思わなかった。持っていかないものは全て燃やしてし借りた本も何を借りたかの記録も消したが、どの本が貸出人不明で紛失しているかを調べるのに技術的に難しくない。
「あなたが本を返さなかったとしても、返却しなかった本を記録無しに探し当てることは容易い。あなたが別の世界に行ったと分かれば、私もそちらに行くだけです。あの子達まで来ないように出来うる限り関連する魔術書を処分して、ね。」
このローザッテは私の世界のローザッテだ！逃げなければ！どこへ？
慌てて身体を起こす。手首に鎖がついていて立ち上がれない。
「だめですよ。ものを無闇に壊してはいけないのはわかりきったことでしょう？」
魔法も無効化されてしまう。鎖の影響か日常生活に使うくらいの火力しか出ない。
こんなことなら元の世界にいたのと同じだったかもしれない。数年以上の平穏を願って飛ばしたこの世界の私に申し訳なく思う。
「あなたには才があるのに、愚かなのが勿体無いですねえ……ですが褒めてあげましょう。あなたは私以外の誰のものにもならず、二人きりになれる場所を整えて私を待っていてくれたのですから」
ローザッテが顔を近づけてくる。顔を背けたくても全身が固まって動けない。
唇が合さった途端に最後にしたキスを思い出す。入り込んできた舌が奪うように、それでいて与えるかのように頭を溶かしてしまう。息もままならなくて、全て支配されている感覚に陥る。
逃げられない。逃げなくちゃ。どこへ？逃げられるの？
がくりと力が抜ける。頭の中がぼんやりとして、次が欲しくなってしまう。また息を奪って欲しくなる。涙がこめかみを滑って落ちた。
この世界の私よ、許してほしい。残りの人生を奪っても得たものが一時の平穏だったなんて。あまりに想定外だ。
まだ抗わねばと思うのに、意志がだんだん溶けていく。
「良い子ですね。あなたは良い子ですから、もう一度私の教えを施して差し上げましょう」
それはいけない。もう戻れない。いやだと言葉を絞り出そうとしても、頭は所詮形ある体の一部だと絶望する。抗うこともできず頷いていた私の頭を、ローザッテは優しく撫でた。
基準がわからない【異邦ヌール】→←自分を不幸にしても逃げられない【ローザッテ】1
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みんとあいす - ｱｯローザッテのお話好きです← (2023年4月11日 22時) (
レス) id: 1d357ed928 (このIDを非表示/違反報告)
姫百合(プロフ) - 茉白さん» ありがとうございます！思いつく頻度にムラがあるので期待せず気長に待っていただければと思います (2023年2月8日 8時) (レス) id: 4d3a486902 (このIDを非表示/違反報告)
茉白(プロフ) - あの、めっちゃ好きです！特にサリヴァン君のお話が好きすぎて好きすぎて・・・更新、無理をしない程度に頑張ってください！ (2023年2月5日 10時) (レス) id: 9190acf184 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：姫百合 | 作成日時：2023年2月2日 15時
