山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ9)

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Question-5 ページ9

5話～明日の夕刻～

「行くって...大丈夫なんですか！？」
「もちろん大丈夫な根拠はない。
ただ...もうここまで聞いちまったら解決しないと気が済まんのだ」

蕗の何かに火が点いたのは明らかだった。

「...それ、僕も行っていいかな？」

そう言ったのは望だった。
どうやら望も気になっていたらしい。

「いいけど...どうなっても知らんぞ？」
「大丈夫だよ。僕暗い所得意だから...」

理由になってない...というかどんな目をしてるんだ一体。
懐中電灯みたいにﾍﾟｶ-って光ったり...

するわけないよなさすがに。

「...行くの？」
「うん。僕も気になってたんだ」

凛がまた本を置いてこっちに話し掛けてきた。
本を読んだりこっち向いたり忙しい奴だな本当に。

「決まりだな。
それじゃ、いつにしようか」
「そうだね...今日は寒いから、明日の夕方にしたいかな。
大体4時くらいに」

あー、そういやここに来たのも外寒いからだった。
すっかり忘れてた。

「んじゃそうしようか。
場所は...山道の前でいいな？」
「うん」
「き、気を付けてくださいね...？」
「...」

突拍子もない話であることに蕗は気付いていない。
目先のことに囚われて前提を忘れる。

...人間ってのは、そういうもの。

「？」

気のせいだろうか。
何か聞こえた気がしたような...

いや、疲れてるだけか。
今日一日がカオスすぎて付いて行けてないだけだ。
心なしか目が回ってる気がしないでもない。

「それじゃ、そろそろ帰るわ。
何気にもう凄い時間になっちまった...し？」
「「えっ？」」
「...5時...50分？」

蕗の一言で一瞬にして場の空気が死んだ。

「あっ！もう誰もいない！」
「ちょっと楽しみすぎたな。
さっさと学校を出るぞ！さもないとあの数学教師が来る！」
「「それだけはマズい！！」」

この学校の数学教師はとんでもない魔物で、
奴のお説教に捕まって生きて帰った者はいない

...というのは冗談だが、休日に呼び出して来なかったら自宅に飛んでくるという恐ろしい教師なのだ。
あまりの恐ろしさに今の一年生のほとんどもこれに怯えていると聞いたことがある。

この恐怖が"数学教師が来る"の一言に詰まっている。
実に便利だが自分も標的になりかけていると考えれば話は別だ。

俺達は逃げるように図書室を出た。
今は外の寒さすら微塵も気にならない。

「(やっぱり今日は滅茶苦茶だ...ッ！)」

職員室から出来るだけ遠いルートを走り抜け、
４人はやっとのことで学校から飛び出した。