山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ22)

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18話～最大の誤解～

～山裾中書斎～

「えっと...前見てた本は...」
「これですか？」
「あーそれそれ...よく分かったな！？」

ごく自然に渡されたが正直相当びっくりした。
恐るべき図書室長。

「さーて、どこに挟まってるやら」

あてもなくひたすら本をパラパラめくる。
その内出てくるはず...と思っていると、

「あっ」

上葉がそれっぽい声を上げた。
どうやらお探しのものが出てきたらしい。
夜眠れなくなるほど探し求めていた"例のもの"が。

「この記事なんだよ...用事があるのは」

たかが昔の古紙と言えど、蕗からすれば答えの鍵が詰まった大事な切れ端。
落ちたその紙切れを慎重に拾い上げる。

「それって、望さんが見ていた...」
「あぁ。この内容に何か秘密があるに違いない。
えーと、"常雨の森にて生徒失踪、行方不明者の捜索は3日目に突入"」

見出し文しか見ていなかったから気にしなかったのだ。
大事なのは本文。ここに何かが隠されている。

「"27日に起きた失踪事件から2日が経過した。
学校の関係者は捜索の手を森全体から旧山道も含めた範囲に拡大したが、失踪した生徒は未だに見つかっていない。
友人の証言によると日没前に山に入ったきり帰ってこないとのことだが、捜索時に木がなぎ倒されていたり木片が散らばっていたことからひどい洪水が発生していたものと見られ、
おそらく行方不明になった"桜田望"(14)はそれに巻き込ま...れ...？"」

...まさか。
そんなことがあるはずがない。

「...本当ですか！？」

何度も目をこすって確認するが、こするたびに視界がぼけて見辛くなるだけ。
しかし、それでも書いてある文章に変わりはない。

蕗の考えていたことは、根本から間違っていた。

そう、望は...とっくに死んでいたのだ。