山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ14)

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Question-10 ページ14

10話～八方塞がり～

～小屋～

「うわっ！真っ暗！
...でもないか。まあ結局何にも見えんが」

小屋の中は外よりも暗かった。
目を凝らせば何があるか程度は見えるだろうが、懐中電灯を持ってる以上は無理に自分の目で頑張る必要はない。
躊躇なく懐中電灯の電気を点ける。

「んー...これといって気になるところは無さそうなのだが」

照らされた小屋の中はごく普通だった。
あるのは机、椅子、棚...ありふれたものばかりで、気になるものはない。
...ましてや溺死の原因になりそうなものは全く見当たらない。

しかし思ったより新しいな。この小屋。
常雨の森って名前が付いてるくらいだし、雨にさらされ続けてるはずだからもう少し錆び付いてるもんだと思ってたんだが。

「どう思う？...望？」

灯りで照らしていないので見辛いが、
望は棚の前に立ったまま静止している。
何かを見ているように見えるが...

「おーい、望...？」

懐中電灯の光を向けて望を照らす。

「...？
あぁ、ごめん。ちょっと気になることがあってね」
「気になること...？」
「ちょっとこれを見てくれないかな」

望が指差したのは古ぼけた"鍵"だった。
大きさは親指の先から第１関節ほど...見た感じは南京錠の鍵って感じがする。

周りのどこを見ても南京錠がかかっていそうな物は見当たらないが。

「...一応持っとくわ」

とはいえ探さないと来た意味がない。
ここじゃないなら手掛かりはどこにもないことになる。
わざわざ山を登ってきて手ぶらで帰るのはない。

～10分後～

「うん。何もないな」

小屋中を探したが本当に何もなかった。
言葉のあやじゃない。棚の中にも何一つ物が入っていなかったのだ。

...結局呪いってのは何だったんだ？
やっぱり空想上の産物のような気がしてならないのだが...
40年も嘘が続いてるって考えるとどれほど馬鹿馬鹿しい話なんだってなるし。

何か知ってそうな望も棚の前に立ったまま動こうとしない。
棚の上の何もないところを、悲しそうな顔でずっと見つめている。

もう帰ろうかな...
蕗がそう考えた、丁度その時だった。

「...？」

山の上の方から何か重い音がする。
まるで、何かが崩れ落ちてくるような...

まさか！
気付いた蕗は慌てて小屋の外に出る。

「やっぱり！」

雨はまだ止んでいなかった。
むしろ勢いを増している。

そしてはっきりと聞こえる嫌な音。
まだ遠いが、木が折られていくような音。

...間違いない。濁流だ。