山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ2)

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始章～マエブレの日～ページ2

......全てが、始まった日。

こう言っても何も分からないでしょうね。
それが当然。貴方は"知らない"のだから。

歴史が動いた日、人々は何をすると思う？
ある人は逃げ惑い、ある人は傍観し、
またある人はそれを書物に残したりして、
その日の出来事を形にするでしょう。

こうして今まで語り継がれたものが、
"歴史"として知られている。
だけど、それは本当に正しいのかしら？

どれだけ広く知られていようと、
今となっては所詮それは古びた紙の上の文字の羅列に過ぎない。
多くの人が知ってるから正しい、なんてものじゃないでしょう？
現に、歴史は何度だって塗り替えられてきた。

では、今ある歴史は全部間違いなのかしら？
答えは否。正確な歴史だっていくらでもある。

それを刻んだのは誰か？
他でもない、その歴史に直接関わった人達。

本当の歴史を見た者は、
誰よりも深くその歴史を眼に焼き付けている。
だから真実を刻むことが出来た。

このように、本当の歴史だって今も世界には数え切る前に死んでしまうほど眠ってる。
だけど、今の人々にはそれがどちらなのか判断することは出来ない。

貴方が知る歴史、そしていずれ手に取るであろう歴史が"真実の歴史(ホンモノ)"なのか、"偽りの歴史(ニセモノ)"なのか。
声も出せない文字は教えてはくれない。

そう、今は誰一人として答えは得られない。
歴史は、共に同じ時を刻んだ者しか知ることが出来ないのよ！

これが人々が"無知"な理由ね。
それじゃ、話を本題に戻そっか。

全ての始まりを告げた、"歴史が動いた日"。

そして、"歴史が動く日"のお話。

ある夜、人々から嫌われて追い出された者達の押し込められた地が、
大いなる雷天と共に切り離された。

人々から拒絶された、"罪人"達のいた場所。
怨念や呪いの立ち込める、"非常識"な場所。

......正しく死ぬことさえ叶わなかった、
悲しい"幽霊"達の集う場所。

これを恐れた人々は、この地域のことをこう呼び、隔離した。

その嫌われた土地の名は......

「山裾(やますそ)」。

』

これから始まるお話は、この非常識な地に住む一人のごく普通の少年の、
とある冬に起きた、ある不思議なお話。

......そして、いずれ"歴史が動く日"となる、
その少年しか知ることのない"前触れ"のお話。