【男主】先生の師【五条悟】

些細 ページ8

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『ご存知だとは思いますが、大人は言うことを聞く子供が大好きでね』

使用人が茶を運んでくる。茶の注がれたティーカップ、ティーポット、空のティーカップ。わかりやすい。当然のように、湯気の立つティーカップはソーサーの上に、そして悟の前に置かれた。____これが、悟が言いつけたものではないことをAは知っている。

そんなものには目もくれず、Aは続ける。

『自由回答で書けば点数をくれる、もしくは点数をつけることすら野蛮とされるものでも、社会に出れば点数がつけられてしまうのです。だって、わかりづらいから。さて、ここで必要とされてくるのはどんなスキルでしょう、さぁお答えください』

「大人を黙らせる解答を書く」

『ふふ、多分そういうところですね。逆張りもいいですけれど、失礼にあたることも多いので場所と時は選びましょうね』


手慣れた手つきでティーカップに茶を注ぐ。ふと、そのカップが満たされたとき、悟の頭によぎった疑問。次の瞬間、口からついて出た。


「なんで、怒んねぇの」

『怒んねぇの、とは』

ぽかんとした顔。珍しくハットを外していた彼の表情がよく見えた。

「初対面のときに殴りかかっても、今みたいなこと言っても、おまえは叱んねぇだろ。なんでかなと思って」

思ったままを口にすると、彼はむむむと考え込むような、年甲斐もないポーズでそんなふりをした。

『多分、気づくときがくるのかなと思うんですね』

「気づくとき？」

『ああ、いえ。なんでも』


その必要はあいにくないようで。彼はいつか見たような笑みを浮かべていった。


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