【男主】先生の師【五条悟】

光線 ページ13

.




すぱんと、音をたてて障子が開かれる。





五条家の会合の雰囲気が、ちょっとでも良かったことは無いと、断言できる。

下世話なジジイと、陰気なババア、ませたガキ、口を滑らせた新妻。わかりやすい地獄絵図だ。地獄絵図入門に加えてほしいな、とAは五条の会合に出席するたびに、思っていた。

どうにもわかりやすく、二つに分断された席。西は浅河、東は胡堂。中央に宗家の人間。偉そうに座る宗家の、それも中央の人間は、盃片手に睨み合いを鼻で笑った。
ただでさえ、下戸ばかりの五条家の大人たちがざぶざぶ酒を流し込んでいく姿は、あまりにも教育には良くなかった。悟は______と思ってみると、良家の嫡男らしく、お行儀よく座っている。教えたとおりに。
かくいうAは胡堂家次男という立場にあり、長男で、当主を継いだ男の隣に座る。正座はあまり得意ではなかった。

相変わらずの雰囲気は、どうしたってご馳走の味がよろしくなくなる物でしかない。

宗家の若いやつや、悟への踏み台にしたい女、一級の推薦状を書いて欲しそうにしている学生など、様々なバリエーションを取り揃えた面子が話しかけてくるのに応対するのは、あまりに骨が折れる。気づけば二時間喋り倒していた。相変わらず、女は腹の探り合いが上手いなと感心した。

ふと、気にかけて悟を見てみる。二時間前の格好からほぼ変わらない姿勢。完璧である。…疲れが、顔に若干滲んでいるけれど。

先程から、上役から質問攻めと社交辞令ビームを食らって可哀想だった(悟は、中年のクソ長い社交辞令を敬意を込めて、社交辞令ビームと読んでいる)。


ちょいちょい、と指で外を指差す。誘うような仕草。そのときの、ぱっと花が咲いたような悟の表情は、年相応であった。




.

酩酊→←解答

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す