【wrwrd!】溢れるほどに【短編集】 (ページ1)

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愛おしい人/tntn ページ1

※学パロ。

がらっ、と教室の扉が開く音は生徒の賑やかな話し声で掻き消された。

扉を開けた主はトントン、私の彼氏だ。
本人が恥ずかしがり屋な為私との関係は周りに隠しており、普段はお互い名字にさん付けで呼びあっている。もちろん２人きりの時は下の名前で呼び合うのだけれども

そんな彼との秘密の関係はかれこれ3ヶ月は続いていた。お互いヘマすることもなく、周りに冷やかされることもなく……と言ったら嘘になるだが、噂を広めることもなく過ごしていたはずだったのだが

「おったおった、A！」

先程までのバカ騒ぎとは違ったざわつきが教室を包む。それと同時に私の頭の中も真っ白になった。
こんなにも人のいるところで彼が私の名を大きな声で呼んだのだ。
当の本人は無意識で呼んだらしく平然とした顔で生徒会の資料を片手に大股で私の元へ近づいてきた。

名前で呼ばれた余韻で顔が熱くなり目が合わせられなくなる。そんな私を不思議に思ったのかトントンは少し首を傾げ、どうしたのかと私に尋ねた。

周りの視線が痛い。どうしてトントンは気づかないのだろう。何もわかっていない眉を下げてこちらを見てくる鈍感な彼を憎く思った。

羞恥に耐えられなくなった私は彼の耳に口を寄せ、無意識に私の名を下の名前で呼んでいたことを教えた。
するとみるみるうちに彼の顔は赤くなる。細くもなく太くもない大きな手で口元を覆って小さな声でやってしもうた…と呟いていた。そんな彼が面白おかしくって、愛おしくて、つい笑がこぼれた。

なにわろてんねん、と弱々しく言う彼の手を引いて私たちは逃げるように生徒会室へ向かった。

恥ずかしかったのだが彼の見たことのない一面を見られたから良しとしよう、そんなことを考えながら彼の持ってきてくれた資料を生徒会室の椅子に腰をかけ眺め、今日を終えた。

翌日教室の戸を開けて席につくと恋愛話の好きな女子から質問攻めされたのは言うまでもない