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*
ぶつくさ言いながらも江口さんは俺を家へと招き入れた。
この人性根は優しいからな。人間かどうか疑うくらいに。
「ただいま」
「おかえりなさい。斉藤さんも一緒だったんだね」
「ごめん、人数分料理ある？」
そう尋ねた江口さんに対して“江口のことだから何人か連れてくると思っていっぱい作ってあるよ”とにこやかに、そして当たり前のように告げた彼女。
宏太朗を推していると言うだけあってその周辺の声優については詳しいようだった。
「斉藤さん、ハンバーグ苦手？」
「いや全然。いきなり来た方の身だし」
俺の返答に安心したように息を吐いたAさんは“もうすぐできるから楽にしてて”とふんわりと笑いながら呟いた。
「なんか俺より壮馬の方がカップルらしい会話してるじゃん」
「江口さん緊張してまともに見られてなかったくせに」
俺の言葉に図星を疲れたように彼は目を逸らした。
大方新婚夫婦のようなやり取りに照れたのだろう。
そんな彼も可愛らしいなんて思いながら、Aさんの様子を伺う。
彼女が誑かしたとかそんなことは想像もできなかった。
「見つけ出すんですか？」
「当たり前でしょ」
強い意志を持った江口さんの目に、思わず俺も息を吐いた。
Aさんのことは信頼してるし、彼女が誑かすようなことはしないと断言できるけど。
けど、もし俺の知らない彼女の一面があったとしたら。
「斉藤さん？どうかした？」
「ううん、なんでもない。ハンバーグ、楽しみにしてる」
「やだ、プレッシャーかけないでよ」
そんなことを一瞬思ってしまったけど、そんなことは無いと自分自身で首を横に振った。
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