13話 ページ15
太「綾ちゃんも……同じ意見みたいだよ」
太宰君はちらりと此方を見て、私が頷いたのを確認してからそう云った
その顔は、終始どうでもよさそうだった
電話の通話口から、「なんだって?」という上ずった声が聞こえた
太「目撃者が何人もいたよ。余程この世に未練でもあったのかな?」
そう云って太宰君は酷薄な笑みを浮かべた
太「兎に角、帰って詳しく報告を──」
次の瞬間、太宰君が水平に吹き飛んだ
広「《羊》だ!」
広津さんの顔には焦りが見えた
確か、原作通りならかなり遠くに飛んで行った筈だ
『広津さん、応援呼んできて!』
云うだけ云って駆け出した
物語通りに話を進めるなら、私は今ここでは行かない方がいいのだろう
だが、今後マフィアとして生活する上で舐められる要因になりそうな事は全力で回避したい
少し走ると、太宰君と"彼"の姿が見えた
「意外に根性のあるガキだな」
少年のその言葉とほぼ同時に肩からかけていた太刀を抜き、容赦なく振りかぶった
が、そこは流石"彼"といったところだろうか
すんでのところで躱された
思わず舌打ちが出たのはご愛嬌、ということにしておく
『………ガキは、君も私も…同じでしょう………?』
太「流石綾ちゃん。早かったね」
そりゃどーも
着地した後、身の丈に合わない大きさの太刀を少年に向けて構えた
因みに姐様曰く成長しても使える様に大きめの刀にしただけで使うのに問題はないらしい
実際特に問題なく使える
太宰君曰く、この時の私の目はまるで獲物を狙う猛獣の様にギラギラしていたらしい
少年はまだ太宰君の上に乗ったままだ
「助けに来るのがチビの女だけかよ。お前本当に人気ねえみたいだな」
『あ"………?身長毟りとるぞ』
少年が私達を嘲笑う様に云った
私は彼をよりいっそう睨みつけた
てか身長気にしてんだよ髪の毛ごと身長毟りとるぞてめぇ
「確かに、俺と戦うヤツは皆最初にそう云う。だがすぐその間違いに気付く。ただのガキじゃねえんだよ。お前らと違ってな」
そんなの百どころか千も承知だ
でも、ただのガキじゃないのは此方も同じこと
「さて、話して貰おうか。お前らが調べてる、《荒覇吐》について。知ってること全部」
太「……ああ。《荒覇吐》か。成程……《荒覇吐》ね」
太宰君は踏まれた拳を他人のものの様に眺め、その後にちらりと私を見て云った
はいはい、手出しするなってことね
太宰君に頷いて、大人しく刀を下ろした
まあ鞘には戻さないけど
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作者名:朱音 | 作成日時:2020年10月11日 18時