10話 ページ12
森「その通り」
森さんが重々しく頷いた
森「世の中には、墓から起き上がってはならない人間が存在する。あの御方のタヒは私がこの手で確認し、盛大な弔いもしたのだからね」
太「墓から起き上がってはならない人間、ね……」
太宰君はそう云ってからしばらく黙っていたが、仕方なさそうにため息をついて立ち上がった
『確かに、私達以外には頼めませんね……』
太宰君は差し出されていた紙片を奪い取った
太「薬。約束だよ。絶対だからね?」
森さんは微笑んで云った
森「これが君達の初仕事だ。マフィアへようこそ」
太宰君はすたすたと出口に向かって歩き、私は黙ってそれを追う
──ふと太宰君が立ち止まった
太「ところで、さっき云ってた……僕達に似た人を知ってるって、誰のこと?」
森さんは少しだけ微笑み、曖昧な表情で云った
森「私だよ」
『……私達色々と違いすぎません?』
森「さあ、そうかな?綾君も本質はそこまで変わらない様に見えたが?」
性格が違いすぎません?…………いや、本質なら性格はあんまり関係ないのか……?
確かに思考は似たり寄ったりな所があるけども
森「太宰君」
森さんの声にはっとして顔を上げる
森「私に理解できるかは判らないが、訊かせてくれ。──何故君は死にたい?」
太宰君はきょとんとした顔で森さんを見返していた
太「僕こそ訊きたいね。生きるなんて行為に何か価値があると、本気で思ってるの?」
その目は、1年前に私に生きる理由を訊いた時と同じ──
無邪気であどけない、少年の目だった
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作者名:朱音 | 作成日時:2020年10月11日 18時