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__放課後。
私は日直のため、教室に残って日誌を書いていた。
本当は夏帆ちゃんに待ってもらいたかったけど、家の手伝いで早めに帰らないといけないらしい。しかも、明日も一緒に帰れないという…
「えっと、『卒業式の歌練習でみんなしっかり歌っていて、いい歌声に仕上げられました。』っと…」
私は今日あった出来事を日誌に書いて、日誌をパタンと閉じる。
「終わった〜…あとは黒板か…」
私は席を立ち上がり、黒板の前に立った。そして黒板消しに手をかけた。
「おーい、何してるの?」
「加島くん…?」
声がした方を向くと、加島くんがドアをおっかかっていた。
「私は日直だから黒板を消してるだけ。加島くんは?また部活の方に行ったの?」
「いや、今行ける状況じゃなくてさ…春休みに入ってすぐに大会あって、ピリピリし過ぎてて行きづらい…」
加島くんは苦笑いをしながら言う。
すると沈黙が流れる。私は黒板を消し始めた。
「俺も手伝うよ」
「え、いいよ」
「いーや、植村さんと一緒にいたいからさ」
「…っ」
加島くんの言葉に返事すら出来なかった。
今は教室で二人っきり。加島くんに胸の音が聞こえそうなぐらいうるさい。
「…あ、今朝はごめん」
「え?」
急な謝罪にびっくりして私は黒板を消していた手を止め、相手の方を向く。
「俺、今朝植村さんのほっぺ触っちゃったじゃん?んで、植村さん逃げちゃってさ…」
「あ、あれは私が勝手にした行動だから!気にしないで!」
私はびっくりして言う。
なんだか、余計私が悪くなってきた…
「ありがとね」
加島くんは精一杯の笑顔を作る。
私は恥ずかしくて見られないのか、黒板に顔を移した。
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作者名:咲乃ほしは | 作成日時:2020年3月6日 15時