11 揃う朔間兄妹 ページ11
_夜の夢ノ咲学院
一言で言うと夜の学校は気味が悪い。しかし凛月兄は慣れたように歩いていく。
数分ぐらい歩いただろうか。廊下の奥から音が聞こえてきた。
『ヴァイオリンの…音?しかもこの曲…』
「軽音部の部室の方から聞こえる」
凛月兄の言う通りヴァイオリンの音は軽音部の部室に近づくにつれ、大きくなっていった。
部室の扉が開いている。
恐る恐る覗いてみると真っ暗な部室に窓からわずかに青白い月の光が差し込んでいた。
そこに立って演奏しているのは零兄だった。外を見ながら演奏しているのか見えるのは後ろ姿だけ。
「凛月、A。」
演奏が止まった。どうやら気づかれていたらしい。
「そんな所におらずに入ってきたらどうなんじゃ」
「…そんなの俺たちの勝手でしょ」
「確かにそうか。それで、なんの用じゃ」
零兄は振り返り、私たちを見た。圧倒的なオーラでその姿はまさに魔王様。少しでも隙を見せたら襲われてしまいそうだ。
「そんなに警戒するでない。…A、我輩になにか言うことがあるんじゃろ?」
『…』
「…二人とも入っておいで」
一瞬、凛月兄が嫌そうな顔をした気がしたが言われるがままに私たちは部室に入った。
棺桶の上に足を組んで座る零兄に腕を組んで余裕そうな顔の凛月兄。なにか恐ろしいことでも起こりそうな雰囲気だ。
「せっかく来てくれたんじゃ、くつろいでおくれ。」
いやいや、この状況じゃ無理でしょ。
「「『 ……… 』」」
沈黙が続く。誰も話そうとしない。
まぁ話さないといけないのは私なんだけど。
『ねぇ零兄』
全てを見透かしているかのような零兄の目。
『今日の夕方のことなんだけどね』
怒られてもいい、もう一度…言わなきゃ。
『…零兄になにを言われても…私は体育祭のアンカーを走る。また倒れるかもしれないけど…みんなの期待に応えたいの』
静かな部室に響く私の声。
『これは…私が…決めたことだから…。』
「あんたからも何か言ってあげたら?」
そう言って零兄を睨む凛月兄。睨まれても零兄は気にしていないらしい。落ち着いた口調で話し出した。
「…A、さっきはすまなかった。その…少し怒りすぎた。Aの気持ちはよく分かった。…お主の好きにせい」
「って言うかA、体育祭とかまだ先でしょ?」
『そうなんだけど…普通科は早めに決めるみたい。遅くなって他の学科に迷惑がかからないように…とかなんとか…』
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冬乃(プロフ) - よっ! (2018年8月30日 18時) (レス) id: db15aabe3a (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 面白い作品で好きです!あと、12話で英智さんのあだ名がエッちゃんじゃなくてセッちゃんになってますよ? (2018年8月19日 21時) (レス) id: 23ae3ada38 (このIDを非表示/違反報告)
リーリエ - とっても面白いです!続き楽しみにしてます♪ (2018年8月15日 17時) (レス) id: e54f7d496b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんごあめ | 作成日時:2018年8月2日 0時