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42.弱虫セリエ ページ43

『あ……』



どうしよう、ここから逃げないと。


ただその一心だった。



『あ、あの、伏見君。これ天祥院が間違って私のカバンに入れてたやつだから……あ、の……ッ!!』


少し離れた所にいた伏見君を近くまで呼んで、手に持っていたプリントを押し付けるように渡した。




もう、ダメ……




伏「あ、セリエ様…!」


後ろで伏見君の驚いたような声がする。

けれども走り出した私は止まることは出来ない。





……何で、何で“彼”がいるの!?2年のクラスにいるなんて知らなかった!!







ーーー俺はアンタのこと、許さないから








その言葉が、耳にこびりついて離れてくれない。





あの目が、真っ直ぐに私を見ることが怖かった。



まだ、全然解決できてないのに、彼に会ってしまったという、その事が怖かった。


そして彼もまた、1年前と何ら変わることのない瞳で私を見ていて。





……私はあの時、彼の大切な人を傷つけて、そうして彼を独りぼっちにしてしまった。




その罪悪感は今でも消えてはくれなくて。




謝りたいと、そう思っていたのに、真っ直ぐに私を見つめてくるあの瞳が怖かった。


ただただその場から逃げ出したいとそう思ってしまった。






『私、弱虫すぎるでしょ……』





?「…うおっ!?」



『きゃぁ!?』



ポツリと呟いたその直後、下を向いて走っていた私は、角から現れた人にぶつかってしまった。



?「おい、前見て歩けよな……て、セリエ?」


『あ……』



目の前で、怒ったような困ったようなそんな表情をする彼をまた、私は知っていて。



『く、ろ君……』



思わず彼の名前をそう口にした。

43.優しい赤毛の君は→←41.2Bの彼。あの日の彼。



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作者名:松並ゆの | 作成日時:2018年4月11日 19時

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