逃げても逃げても追う彼ら【あんスタ】 (ページ2)

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1.兎な幼馴染みページ2

『これ、昔作った曲をアレンジしてみたから』

良かったら使って。

そう言って私は彼に楽譜を差し出した。

「いつもありがとな、Aちん」

そう言った彼は1年前とは全く違い、とても可愛らしく笑った。

私の前にいる彼ｰｰｰ仁兎なずなはアイドル科に通う私の幼馴染みである。

そんな彼に私は時々曲を提供している。

それは彼の新しいグループ、Ra*bitsへの曲。

彼らはまだまだ出来たてのグループで。
他のユニットより練習が圧倒的に足りてない。

だから私がこうして練習曲を提供するのだ。

まぁどれも、私が音楽科にいた頃作った曲だけど。

だけど夢に向かって進み出したなずなの為に、何かしたくて。

こうやって楽譜を持っては、人が少ない放課後にアイドル科の校舎裏に侵入して渡していた。

な「なぁAちん」

『なぁに?』

な「昔みたいに新しい曲、もう作らないのか?」

なずなは静かに、でもどこか哀しそうな声でそう問いかけた。

…新しい曲、か。

確かになずなの言う通り、昔は沢山曲を作っていて、色んなアイドルユニットに提供したり、“セリエ”として自分で歌ったりしていた。

けれど。

『私はもう、作っちゃダメなんだよ』

私の曲は、皆の幸せを奪ってしまうから。

あの1年前の事を繰り返したく、ないからね。

そう言えば、なずなはやっぱり哀しそうな顔をした。