その恋は甘いハート (ページ17)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:15,834 hit

16 ページ17

◇

「話あるから放課後、いつもの場所」

勝負に勝ったエースはそれだけ言うと次の測定に向かっていった。

いつもの場所、そこは2人で過ごす学園校舎裏のあの場所。

勝負に負けた私はエースの言うことを聞かないといけない。

それでも、私はあの場所には行かない。

少しずつ、少しずつあなたから離れなければいけないから。

◇

『これも違う……』

放課後。私はエースに呼び出された場所には行かず、図書館で調べ物をしていた。
探しているものは見つからない。

見つけないといけない。それでも、見つからないでほしいと思ってしまう。

矛盾した心のまま私はずらりと並ぶ背表紙に目を向ける。
調べ物をしていても頭の中にはエースのことばかり。

エース、何を言うつもりだったんだろう。
約束された場所に行かなかった私には、彼が何を告げようとしていたのかがわからない。

もしかして、別れ話……？

『……』

棘が刺さったような痛みに胸を押さえる。
エースに別れを切り出されてもおかしくないことをしているのは自分なのに。

離れないといけない。

それでも離れたくない。

これ以上一緒にいたら学園長の言う通り別れが辛くなる。

もう…………辛いことに違いはないのに。

『エース……っ』

目から溢れる涙が床を濡らす。
ズキズキと痛む胸が苦しくて苦しくて涙が止まらない。

「A？」

『っ……』

背後から聞こえたその声にゆっくりと振り返る。

聞きたかった声、本当はとても会いたかった人。

戸惑いに揺れた瞳が私を見つめていた。

▶