【ハイキュー!!】いつの日の道はこれから【短編集】

【菅原孝支】声色グラフィティ・１ ページ31

*


私、AAは『声が変わる』。感情にまかせて、自分ではコントロールできないくらいに『声が変わる』。

他の人でも、声が変わることはよくあるだろう。急に裏返ったり低くなったり。声優とかは声の仕事だから勿論変えられるのだろうけど、私のはそれとは違う。


クラスメイトの孝支君曰く、「声ごと雰囲気が変わる」のだそうだ。

言われてみればそうかもしれない。嬉しくなった時、悲しくなった時、悔しくなった時……全部全然違うのだ。

「時々別人の声に聞こえるよ」孝支君は冗談混じりにそう言って笑う。
けど、そうとはわかっていても、実際そうでも、孝支君にそう言われるとちょっと寂しい。


*


「孝支君、私この声直したい」

「急に何を言い出すかと思ったら」


何かあったの？ 訊いてくる孝支君に無言で頷き、私は自分の席で話し始めた。

昼休みで、教室の人はほとんど廊下に出払っている。今日は珍しく、大地君は居ないらしい。


「私だって、変えようと思って変えてるわけじゃないんだよ？ クセっていうか、うまく調節できないし」

「うん」

「だからさ……媚びてるとか、そう言われるのは不本意なもので」


たまたま、若い男の先生(かなりイケメン)に褒められただけである。授業の間の休み時間、少し気になったもので教室の棚の整理をしていたら、丁度授業が終わって教室を出て行こうとする先生に声をかけられて。

「A、気が利くな」なんて急に言われたものだから、慌てて「は、はいっ、ありがとうございますっ」と返事をした。

先生はちょっと笑って教室から出て行った。


けれど、どうやら大分可愛い声でも出ていたらしく、ボソリとクラスの女の子に「Aってさー……」と呟かれた。

故意でやってるつもりはない。何回でも言うけど、自然にこうなってしまうのだ。


大体を聞いて、孝支君は苦笑しながら頷いた。「それで、ずっと不機嫌だったんだ」。ばっちり観察されてたようで恥ずかしい。


「でも、コントロールするのって難しくない？ 実際、自分の耳で聞く声と本当に出てる声って違うんだしさ」

「それは聞いたことあるけど……何とかならないかなあって思って……」

「A、低い声も高い声も出るのに、歌う時はほとんど生かせてないしね」

「それは言わないでよ！」

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