クピードの弓矢 (ページ13)

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13 -Taiga- ページ13

「ありがとうございました。」

夕方、相談者との面会を終えたAは携帯を取り出した。

後ろから覗き込むと北斗からの週末のお誘い。

少し嬉しそうに口元を綻ばせているAは、なんだか幸せそう。

北斗とAが契約を交わして3ヶ月が経つ。

最近はAの仕事が忙しくてめっきり会っていなかったが、

それまでは週末に限らず、2人はよく出掛けていた。

それに着いていく度に北斗はAにバレない程度に「何で来んだよ」と文句を言ってくる。

最近はそれが照れ隠しだと気づいた。
何気に嬉しそう。

2人は初めこそくだらない言い争いばかりだったのに、いつの間にかその数は減っていた。

楽しそうに笑い合って、楽しそうに素をさらけ出せるようになって、

どんどん“本物”に近づいていく。

俺知ってるよ。

Aが北斗のデートの時、いつも洋服やメイクに悩んでること。

俺知ってんだよ。

北斗が、デートの数が多いから相手方に報告せずに自腹切ってるの。

それでも、2人は、レプリカという関係のまま。

「うわっ、スタ爆無視された。」

Aのトーク画面には少し変なセンスのスタンプが何個も浮かんでいて、返事の代わりに既読マークだけが表示されていた。

「ひどいなぁ。」

言葉とは裏腹に小さく笑う彼女へ

小さな願いを込めて弓を射る真似をした。