/ 邪 魔 者 / A.D Y.R

4call ページ4

｢いらっしゃいませー！｣






居酒屋の中に入ると相変わらず音がうるさい。




喋り声、料理の音。






とにかく全部が重なって雑音になる。








『すいません、有岡って…』









連れです、と言うと奥のほうの影の薄い席へと案内された。








｢あ、大ちゃん榮さん来たよ｣









この人薮宏太って人だよね。



大貴のメンバーだからわかる。



薮くんの隣にはうつ伏せになっている大貴。








『大貴、帰ろ』







大貴はんー、と唸るが起きない。









『薮くんに迷惑掛けてるよ』








大貴｢…榮？｣









『榮じゃない。ごめん』









するとむくっと顔をあげ、私を確認するように顔のパーツを一つ一つ見た。









大貴｢榮じゃないじゃん｣









大貴｢なんでなの｣









酔っ払っているせいかいつもより無駄口が多い。









大貴｢なんで、なんで榮じゃないの？
声は一緒なのにさ！｣









そう言って私の肩を軽く叩く。私を否定するかのように。









大貴｢なんで、お前じゃなくて榮が居なくなったんだよぉ…｣









『...ごめん』









そういうしかないんだ。
私は榮じゃないのだから。









大貴｢お前、榮じゃないの？｣









『...違うの』









おかしくなっていく大貴に涙が出る。それをこらえようと歯を食いしばる。









薮｢大ちゃん、酔っ払ってるね｣








そう苦笑いする薮くん。



私がどれだけ傷ついているとか誰にもわからない。









大貴｢俺、榮じゃないとやだ｣








『帰ろ、大貴』









服の裾を掴むと拒みもせず、すんなりと立った。


ただその表情があの時とそっくりなだけ。









『私の家泊まりな』







大貴｢...ん｣









薮｢ごめんね｣









軽く会釈し、居酒屋を後にした。

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