この度猟犬の無明の王と政略結婚することになりました

第１話 ページ3

Noside

「おはようございまーす！」

探偵社に明るい声が響き渡る。

その声の持ち主は、探偵社社員の織田...いや、条野Aである。

彼女は先日、猟犬の１人、条野採菊と政略結婚した。

互いの組織の為と、向こう側から持ち掛けられた提案であり、此方としても猟犬との衝突はどうしても避けたい為、渋々ながらも了承したのである。

与「で、彼とは上手くやってるのかい?」と、探偵社の医師、与謝野晶子が尋ねてくる。

無論、やれているはずがない。

彼女にとって猟犬の印象は最悪のものであるからだ。

探偵社の皆を傷つけた悪役___。それ以外に印象など抱いていない。

Aは一応夫である条野を未だに嫌い、避け続けていた。

だが、そんなことを言えるはずもない。

言った場合、与謝野が「やっぱり代わろうか?」と云うのが目に見えているからだ。

Aにとって与謝野は、恩人であり、家族のような存在だ。

無理をしてほしくないし、傷付いてほしくもない。

彼女の過去は聞いている。どれだけ辛い思いをしてきたのかも知っている。

Aも大切な人を失なうことの辛さを経験している。

だからこそ、幸せになってほしいと願っているのだ。

(あんなやつに、与謝野さんを預けられるわけがない！!)

その一心で、「其れなりに」、と軽く笑った。

今日もいつも通りの日々が始まる。

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