第4章 再興の女神 〜炎のゴブレット 上編〜

第1話 ページ2

柔らかい綿の敷物から香る

洗い立ての心地よい匂いは
刈りたての芝の青々とした香りとよく合う


穏やかな風がすり抜けていき

舞い上げられた木の葉が重力に従って
そっと地面に落ちていく


「いい午後だね」

『クィリナスもそう思いますか??』

「久々に過ごす君との時間が、こんなにも素敵で幸せだと…噛み締めていたところだよ」

『ふふｯ……そうですね、とってもいい午後です』

手に取ったティーカップを口付ければ

すっかり温くなったハーブティーが
また一段と印象を変えて口の中を満たし

華やかな芳香が鼻腔を通り抜けていく


『ん、味が変わりましたね!!』

「そうそう!温度によって広がる香りが変わるんだよ、面白いだろう??」

『お楽しみとはこのことだったんですね!』

「気に入ったかい?」

『えぇ、それはもちろん!!!』

お土産だと渡されたハーブティーは
見たこともない異国風なパッケージに包まれていた

魔法が施されたお茶としか聞かされておらず

一体どんな仕掛けがなされているのかは
見当もつかなかったが

風味が変わるとは予想外だった


『でも、温度って魔法じゃないんじゃ……』

「ふふ、実際は温度で魔法を作動させるっていうカラクリなんだよ」

『え、そんな事が可能なんですか???』

「まぁ、できないことはないかもね。企業秘密って言われたから、どういう仕組みかはわからないけれどね」

おおよそハーブから抽出した成分に
時限魔法のようなものを掛けたのだろうと

クィリナスはスコーンを片手に熱弁をふるった


「マグルの世界にも、そんな仕掛けや仕組みがあって────ってこれじゃあ授業みたいだね」

『どのお話もとっても興味深いですよ』

「そう言われるとつい話したくなってしまうんだけど、今は休暇中だからね。堅苦しいのはなしにして代わりにもっと面白い話をしよう!!」

満面の笑みを浮かべ
楽しそうに声を弾ませる

こんな姿を

誰が想像できただろうか



私が変えた


世界を
運命を

定めをも

捻じ曲げた



どれ程穏やかな日々を過ごそうとも


そのことを
決して忘れてはいけない─────

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