選ばれし者とその妹２ (ページ4)

今日:36 hit、昨日:57 hit、合計:144,757 hit

Story 54 ページ4

「こんばんは。部屋は空いていますか」

「ああ。十七号室が空いてるよ」

　バーテンダーのトムが答える。彼はちらりとグラスから視線をあげてAを見た途端、驚きの声を上げた。

「これは、なんと！ A・ポッターではありませんか！こんな夜にお一人で来られたのですか？」

「は、はい。ちょっと事情があって……」

「そうですか。ところで、夕食はもう食べられましたか？」

「いえ、まだ……」

「それはいけない。すぐにご用意致します」

「ありがとうございます！あ、先に部屋に行ってフクロウ便を出してもいいですか？」

「もちろんですとも。どうぞゆっくりとしていってください」

　予想以上に親切にされたことに安堵しながらAは急ぎ足で木の階段を登り、十七号室に入るとすぐさま羽ペンと紙を引っ張り出した。

　ロンへ
　突然こんな形で手紙を出すことになってごめんなさい。実はちょっとしたトラブルで、ハリーが部屋に閉じ込められてしまったの。おじさんは『二度とホグワーツには行かせない』と言ってて、このままじゃ本当に学校に戻れなくなるかもしれない。私じゃどうすることもできないから助けてほしいの。
　追伸私は今、『漏れ鍋』にいます。
　 A

「これをロンの家に届けてちょうだい」
　
　手紙を咥えたアレスが飛び立ってからAはようやく一息つくことができた。
　

　次の日の朝。朝食を食べ終わり、早めの仕度をしているところにアレスが帰ってきた。嬉しいことに学校からの手紙だけではなくロンからの手紙もくわえている。Aは歓喜しながら受け取り、急いで開封した。

　 Aへ
　ハリーは無事に救出したよ！実はパパの空飛ぶ車を借りたんだ。マグルの作ったものに魔法をかけて改造するのが趣味なんだけど、こっそり飛ばしたことがバレてママはもうカンカン。
　今日ダイアゴン横丁で会おう！
　ロン

「やった！」

　心配事が過ぎ去るとAはロンの父親に尊敬の念を抱いた。普通の車に飛行改造を施すのはとても容易ではないだろう。

　学校からの封筒には新学期用の新しい教科書のリストが入っていた。呪文学の本が一冊、残り七冊は『闇の魔術に対する防衛術』用でその全てに『ギルデロイ・ロックハート著』と書かれていた。

　次の防衛術の先生は誰だろうと考えてからクィレルのことを思い出し、Aは目元を押さえる。彼を失った傷はいつ癒えるだろうか。
　
　