選ばれし者とその妹２ (ページ23)

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Story 73 ページ23

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　二倍だ、二倍だ、苦労も苦悩も
　炎よ燃えろ、ぐつぐつ煮えろ
　邪悪なものがやってくる

　合唱団の歌と共にホグワーツは新学期を迎えた。ダンブルドアが防衛術担当のルーピン先生を紹介した時は予想通りだと思っていたAも、魔法生物飼育学の新しい担当としてハグリッドの名が挙がった時には驚いていたが、すぐに皆と一緒に拍手した。

「最後のお知らせじゃ。魔法省の方針によりホグワーツは当分の間、アズカバンの吸魂鬼に守ってもらうことになった」

　生徒たちはにわかにざわめき、Aは自身の体を強く抱きしめる。何の罪もないハリーが手を出されたあたり、彼らがそこまで理性のある生き物だとは思えなかった。

「なあA、吸魂鬼に抱きついたんだって？」

　隣のレイブンクロー寮生ステビンズが唐突にそんなことを言ったせいでAは危うくゴブレットを落としそうになった。

「どこまで知られてるの？」

「みんな知ってるよ。あとハリーが気を失ったこと、マルフォイの奴がずっと話のネタにしててさ」

　だがフレッドとジョージの話によると、ドラコも吸魂鬼に対して怯えていたという。結果、双子のいるコンパートメントに飛び込んだようだが、普段馬鹿にしているだけにその時の彼の気まずさは半端なかっただろう。

「体調は大丈夫？」

「うん、今はもう平気。ありがとう」

「それでその……どんな感じだった？」

「どんな感じって……？」

「ほら、吸魂鬼に抱きついた時。人間みたいな感じだった？」

　ゴーストとも人間とも言えないあの感触。黒いローブ越しに伝わった感覚をどう伝えればいいものか。

「……知りたい？」

「やっぱりやめとく」

　Aはスリザリンのテーブルに目を向けた。ドラコはハリーのほうを指差し、仲間たちと意地悪げな笑いを浮かべている。呑気なものだ。

「吸魂鬼は学校への入り口を全て見張る。学校への影響は何も無いが、吸魂鬼は獲物も行きずりのものも容赦なく襲ってくる。あの者たちが危害を加える口実を与えるで無いぞ」

　こうなったら一刻もはやくブラックが捕まることを祈るしかない。Aはため息をついた。

「たとえ暗闇の中でも幸せを見つけることは出来る。
……明かりを灯すことを忘れなければ」

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