選ばれし者とその妹２ (ページ18)

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Story 68　〜アズカバンの囚人〜ページ18

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「バーノンおじさん、許可証にサインをして頂けますか？」

　ホグズミード行きの許可証の紙とペンを手にAが切り出す。ソファで新聞を読んでいたおじさんは怪訝そうに眉をあげ、「何の許可証だって？」と訊いた。

「町に出かけるための許可証です」

「ふーん」

　大して興味もなさそうな反応をすると、バーノンおじさんはAの差し出した許可証にあっさりとサインした。

「ありがとうございます。ハリーの分もお願い出来ますか？」

　内心喝采をあげつつ、Aがハリーの許可証を出すと「あいつはまだ保留だ」と返される。

「明日、マージが来るからな。あいつがちゃんと行儀良くしたならサインしてやる」

　マージというのはバーノンおじさんの妹で、ハリーやAにいちゃもんをつけるのが大好きという嫌味な性格をしているために二人は彼女のことを嫌っている。
　しつこく粘ると逆効果だと心得ていたAは素直に引き下がり、ハリーに許可証を返してから物置部屋に戻った。

　

　
　翌日は太陽を拝むことはできなかった。
　マージは戸口に立つハリーに濡れた傘を押しつけてリビングに行った。Aは台所で紅茶を淹れつつ、内心では何かの手違いでバーノンおじさんの妹の帰宅日が早まらないかと期待していた。

　だが結局その願いは叶わず、マージは三日間滞在することになった。そして最終日の夜もハリーとAだけでなく二人の両親にまで難癖をつけた。

「メス犬に悪いところがありゃ、仔犬もどこかしらおかしくなるもんさ」

　マージが兄妹の母親――リリーを馬鹿にした時、ペチュニアおばさんだけが笑っていなかったことにAは気づいていた。ペチュニアおばさんは静かに聞きながらも拳を震わせ、マージを睨みつけているように見えた。彼女は本当は今でも妹(リリー)のことを愛していたのだ。

　とうとう堪忍袋の尾が切れたハリーは怒りを爆発させ、無意識に魔法でマージを膨らませてしまった。彼女が空の彼方へ飛んで行ってしまった後、ハリーは二階に駆け上がり、その後を慌ててAも追う。