選ばれし者とその妹２ (ページ14)

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Story 64 ページ14

今度は生徒同士がやることになり、ハリーとマルフォイが舞台に立った。
　きっとドラコのことだから三つ数え終わらないうちにフライングで術をかけるだろう。そんなAの予感は的中し、ハリーは不意打ちを食らって吹っ飛んだ。だがすぐに立て直し、今度はドラコが床に転がる。

　スネイプに乱暴に立たされたドラコは足元に向けて杖を振った。

「蛇いでよ( サーペン・ソーティア)！」

　杖から飛び出した蛇を見て、クィレルが同じ魔法を使っていたことをAは思い出した。服従の呪文の練習ではこうやって魔法で出した蛇を使っていた。

「動くなポッター、追い払ってやろう」

　立ち尽くすハリーをどこか楽しむような声でスネイプが言って杖を出したが、ロックハートがそれを遮った。

「私にお任せあれ！」

　ロックハートが呪文を唱えると、蛇は宙を飛んでまた床に落ちてきた。追い払うどころか、これでは怒らせただけだ。

　Aが杖を出して小声で呪文を唱えようとした時、ハリーが何かを囁きながらゆっくりと蛇に近づいて行った。それは蛇の発する音をただ真似しているだけのようにも聞こえたが、そのうちに蛇はハッフルパフ生のジャスティンに向かって攻撃の構えを取る。その場面だけを切り取ると、ハリーが蛇に彼を襲わせようとしているように見えなくもなかった。

　だがハリーがさらに近づくと、蛇は素早く振り返って彼を見、大人しくなった。なんて言っていたのかは分からないが、従えたのだとAは理解した。

「すごいわハリー……！」

　思わず呟くと生徒たちが一斉にAを見る。その全員が顔に恐怖の色を浮かべて。

　やがてスネイプが呪文を唱えると蛇は火花を散らせて消え去った。彼も、ロックハートも信じられないというような表情でハリーを見つめている。

「悪ふざけはよせよ」

　ジャスティンがハリーに向かって叫んだ。誰よりもその目に恐怖を湛えて。

　

「ハリーのあれ、どう思う？」

　大広間から出て、皆がひそひそと不吉な話をしている間、レイブンクロー生がAに話しかけた。

「どうって……蛇の鳴き真似をしてジャスティンから注意を逸らしたんじゃないの？」

「ごめん、君の兄を悪く言うのは気が引けるけど……僕には蛇を唆してるように見えた。ジャスティンを襲わせようとしてるように見えたんだ」

「まさか」

「僕だけじゃない。多分、皆そう思ってる」

「私はハリーを信じるわ。ハリーは絶対にそんな人じゃない」