選ばれし者とその妹２ (ページ13)

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Story 63 ページ13

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「皆さん集まって。私がよ～く見えますか？」

　夜八時に大広間に行くと、食事用のテーブルは取り払われ、月の満ち欠けが描かれた青い舞台が出現していた。

「最近何かと物騒な事件が続いているので校長からお許しをいただいて決闘クラブを開くことにしました。万一に備え自分の身を守れるよう皆さんを鍛えます。私も何度も危ない目にあって来ました。詳しいことは著書を読んでみてください」

　まさか本当に彼が防衛術を教えることになるとは。
　Aはこの時点で嫌な予感がしていた。普段の授業でも良いところ無しなのに、本格的に実践などして大丈夫なのだろうか。
　ここで舞台の端からスネイプが現れ、このときばかりはAは逆に安堵した。ロックハート一人よりは信頼できる。

「紹介しましょう。私の助手、スネイプ先生です。勇敢にも模範演技を手伝ってくれます。皆さんは心配には及びませんよ。魔法薬の先生を消したりはしませんから、ご安心を」

　Aは正気を疑った。悪気はないのだろうが、よくもまあこんなことが言えたものだ。無礼な言動で逆にロックハートが消されてもおかしくはない。
　
　やがて二人は互いに一礼し、杖を剣のように構えた。

「三つ数えて最初の術をかけます。ワン、ツー、スリー――」

「武器よ去れ( エクスペリアームス)！」

　スネイプが叫んだ瞬間、紅の閃光が走り、ロックハートが吹っ飛んだ。予想通りだとAは苦笑する。

「今の、知ってる！」

　スリザリンの女子生徒が叫ぶ。それを合図にAに戦闘を教わった数人の生徒が「あれ、教わったやつだ！」と口々に反応を示した。

「イタタ……おや？スネイプ先生、いつの間に彼らに今の呪文を教えたんですか？」

「さあ？我輩、全く身に覚えがありませんな」
　
　そう言いながらスネイプはAを見た。

「君たち、一体誰に教わったんです？是非その人に会ってみたいですね」

「それが、思い出せないんです」

「誰に教わったか、そこだけ記憶がなくて」

　ロックハートが生徒と話している間もスネイプはずっとAを凝視している。Aは必死に『私、何かしましたか？』という表情を保った。

「……まずは生徒達に非友好的な術の防ぎ方を教えるのが賢明ではないでしょうかね」

　ようやくスネイプがロックハートに向き直り、Aはホッと胸を撫で下ろしたものの、バレているということは確信していた。やはり彼には嘘は通用しないようだ。