Story 43 ページ44
「そろそろ来る頃かな」クィレルは地下室の入り口のほうを一瞥する。
「誰が……？」
「君の兄だよ」
え？ どうしてハリーが？
「賢者の石のことを嗅ぎつけたみたいでね。まったく忌々しい小僧だ。ああ、そうだ。邪魔をしようとするんじゃないぞ？ 黙って大人しくしているんだ。さもなくば――」
――お前の兄を殺す。
クィレルは脅すように釘をさし、Aは頷いた。
「いい子だ」
入り口の階段に影がさす。誰かがゆっくりと降りてきているのがわかった。
「あの方の障害となるものがハリーポッターだけでよかったよ。流石に君を殺したくはないからな」
「……え？」
「A……！？ どうしてここに……」
ハリーはAの隣に立っているクィレルに気づくとさらに仰天する。
「あなたが！？ まさか、そんな……スネイプのはずだ！ だって……」
「彼はいかにも怪しげに見える。スネイプがいれば誰がこんな、かわいそうな、ク、クィレル、教授を怪しむかな？」クィレルはわざとどもってみせた。
「でもスネイプはクィディッチの試合で僕を殺そうとして……」
「スネイプではない、私が殺そうとした。あの時スネイプのマントが燃えた拍子に目を離さなければ上手くいっていたのに……！ スネイプは反対呪文で邪魔していたのだ」
これはAも予想外だった。犯人でないことは分かったが、まさかハリーを守っていたとまでは考えられなかった。
「スネイプが僕を助けようとした……？」
「お前は目障りだったのだよ。特にハロウィーン以降」
「じゃあ、トロールを入れたのも……」
「そう、私だ。だが、スネイプはだまされなかったがな。みんな地下室へ急いだのにあいつだけは三階へ向かった。あいつは常に私を疑っている。一人きりにはしなかった。……だが、あいつは知らん。私は一人ではない。決して」
クィレルは鏡に向き直る。
「鏡には何が映る？ あぁ、見えるぞ。賢者の石を持つ私が。……どうやって手に入れる！？」
苛立ちを募らせたクィレルにどこからか謎の声が答える。
《その子を使え》
「ここへ来いポッター！ はやく！」
クィレルは命令し、鏡の前に立ったハリーに何が見えるか問いかけた。
「どうした、何が見える！？」
「僕がダンブルドアと握手してる。グリフィンドールが優勝して……」
Aはハリーの声色から即座に嘘だということを読み取る。
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
