Story 36 ページ37
＊
季節は十二月の半ば。もうすぐクリスマス休暇だが、Aもハリーもプリベット通りに帰るつもりはなかった。そのため、先週先生たちがクリスマスに寮に残る生徒のリストを作った時、二人はすぐに名前を書いた。
「おーい、A！」
雪の積もる中庭で双子のウィーズリー兄弟が手を振っている。Aは笑って手を振り返し、二人のところへ走って行った。
「わっ」
「おっと、気をつけて」
転びそうになったところをジョージが支えてくれた。フレッドは何やらニヤニヤと笑っている。
「どうしたの？」
「いや、ちょっと面白いこと思いついてさ」
興味を引かれたAの前で双子は何やら雪玉を作りはじめる。
「あそこにクィレル教授いるだろ？」
「ちょうどこっちに背を向けて」
「どうするの？」
「これに教授を追いかけさせる」
忙しくしてるんだからやめたほうがいい、というAの忠告を「まあまあ」と受け流し、二人は雪玉に魔法をかけてクィレルにつきまとわせた。
「え！？ ち、ちょっと、な、な、何ですか！？」
気づいたクィレルはしつこくターバンに当たってくる雪玉を追い払おうとする。中庭で遊んでいた生徒たちはそれを指差して笑った。
「ちょっとやめなさいよ二人とも」
Aが注意したが、腹を抱えて笑い転げている双子には聞こえていない。
「もう！」
見るに見かねたAが杖を振ると、魔法が解けた雪玉が地面に落ち、クィレルが足早にこちらに近づいてきた。
その場で罰則を言い渡された二人がすたこらと逃げ去った後、クィレルはターバンを直しながらイラついたように舌打ちをした。
「まったくあの双子は。……そ、そうだ、と、解いてくれて、あ、ありがとう、ミス・ポッター」
「いえ、大変でしたね」Aが苦笑する。
「ほ、本当散々ですよ……わ、笑われますし……。そ、そういえば、もしかして無言呪文できるように、な、なりました？」
「はい！ まだ全部の呪文ではありませんが、練習してから少しは上達したと思います」
「それはよかった」
流石に怒られると思ったAは魔法薬の件は黙っていたが……
「どうしたの？」
声を潜めて笑いだしたクィレルに訝しげにAが尋ねると彼は切れ切れに答えた。
「い、いや……A、魔法薬でマルフォイ君の小瓶を爆発させたんだって？」
「知ってたんですか……」
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
