Story 20 ページ21
「そうだったんですね」
「ところで、学校生活にはもう慣れましたか？」
「え？ あ、はい、なんとか」
「それはよかった。なんだかいつも何かに怯えていたように見えたから心配で」
「私、何でも大袈裟に考えちゃうんです。大したことないのに悪いほうにばかり考えて、ビクビクしてばかり」
Aが苦笑するとクィレルは「似てますね」と答えた。
「学生だった頃の私もそんな感じでした。あなたが言っていたように、いつもあることないこと考えて必要以上に恐れて」
「先生も？」
そう聞き返したAはそういえば初対面の時もそんな感じだったと思い出す。彼は授業の時もそうでない時も誰かと話すときは緊張気味にどもっており、そのことで何人かの生徒にいじられていた。
それを思い出した時、Aは隣のクィレルにどこか違和感を覚えた。
「あまりにも気弱だったのでよくからかわれましたね。机の中に悪戯された時なんて、授業中に爆発して椅子ごとひっくり返ったり教授には睨まれたりで散々でした」
クィレルは笑っていたが、Aは「ひどい」と憤慨した。
「まあ……今となっては良い思い出です。それにしても誰もいない廊下は静かで良いものですね」
「はい、本当に」
「……A、君はハリー・ポッターではないから違って当然だよ」
「え？」
「逆に彼に君の真似は出来ないし、誰も君になることなんて出来ない。彼に出来ないことを君は成し遂げることが出来るかもしれない。だから――」
あまり自分を卑下しないでくださいね、と優しく言われ、Aは泣きそうになるのを堪えて「ありがとう」と返した。
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
