検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:5,944 hit

美しく愛しいみだれ髪 ページ11

Prrrrr… Prrrrrr…



「……ん…」



鳴り響いた電話のベルに晶子は目を覚ました。サイドテーブルに置いてある自分の携帯は沈黙したまま。



「すまない、僕のだ…」



隣にいた寛がベッドから起き上がり、脱ぎ散らかされた自分の衣服から携帯を取り出すと「もしもし」と耳に当てる。



『おはようございます』

「やあ信子、おはよう」

『奥さんと居る時にすいません』

「構わないよ。君が電話を掛けてくるってことは、何かあったのかな?」



寛は顔と肩で携帯を挟み、両手を自由にさせるとズボンに脚を通す。



『それが、明星(あかり)ちゃんの具合が悪いみたいで…熱もあって咳が出てます』

「えっ、明星ちゃんが?……分かった、直ぐに其方へ向うよ。今何処だい?」

『今は明星ちゃんの部屋の前に…』

「分かった。とりあえず、直ぐに行くから用意してて」

『分かりました』



寛が携帯を切り晶子へ顔を向けると、彼女は頬杖を付きながらこちらを呆れた顔で見ていた。



「全く、妻と居るのに他の女から電話かい?」

「冗談。明星ちゃんが風邪引いたみたいなんだ。だから行かなくちゃ。明星ちゃんは知ってるだろ?」

「あぁ、前に合わせてくれた盲目の娘だろ?」



二人の言う“明星”とは、寛が向こうの診療所で面倒を見ている女の子である。晶子の言う通り、彼女は事故にあって両親を喪った。彼女自身は重症を負ったが一命は取り留めた。だが目の前で両親のタヒを目撃した明星は心を病み、目が見えなくなってしまっていた。足も満足に動かすことが出来ず、今は車椅子で生活をしている。



「最後に会った時は良い笑顔を見せるようになってたねェ…」

「あぁ、未だに目は開けられてないけど、よく笑う可愛い娘だよ。また会いに来ればいいさ」

「また今度だねェ。今日は買出しに行こうと思ってたから、荷物持ちでもお願いしたかったんだけど…籌三郎でも使うとするよ」

「手加減してあげなよ?晶子は1度に買いすぎるから」



シャツを着てネクタイを締め、ベスト、ジャケットを羽織る。



「じゃあ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい…」

「あぁ…」



寛は身を屈め、晶子に触れるだけのキスをする。
唇を離し、フッと微笑み、後ろへ2、3歩下がる。



『異能力、東西南北』



目の前から寛の姿が消え、小さな風が吹く。
晶子は再びベッドに寝転がると、唇に指を這わした。



「あぁあ…もっとするンだったねェ……」

安らぎの表→←長く愛おしい距離



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

∞色(プロフ) - 白さん» あわわわわ!ありがとうございます!外したつもりでいました(汗)気を付けます!御指摘ありがとうございました! (2016年12月2日 0時) (レス) id: d84928d06e (このIDを非表示/違反報告)
- 「オリジナルフラグ」が立ったままになってしまっていますよ。尚、二次創作は「オリジナルフラグ」の対象ではないので、外していただければと思います。 (2016年12月2日 0時) (携帯から) (レス) id: d9d0dd6f99 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:∞色 | 作成日時:2016年11月27日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。