218 ページ49
日中の悪魔たちの活気で溢れる賑やかな雰囲気はなりをひそめ、不気味な雰囲気を醸し出す静かなバビルス。
その上空を迂回するような形で横切るひとつの影。
闇夜に溶け込む黒い毛並みに、大きな翼をはためかせる影は、そのままバビルスから少し離れた森へと降り立った。
『なんとかバレずにここまで来れましたね』
shp「…せやな」
ピコちゃんをなんとかここまで連れ出すことに成功した私とショッピ先輩は、なんとも言えぬ顔で頬を擦り付けて甘えてくるピコちゃんを見た。
目の前に広がるのは、暗く大きな洞窟。
shp「悪いけど…しばらくここがお前の仮住まいやねん」
『もっと広くていい場所見つけるから、それまで我慢してね』
ピコちゃんを洞窟に入れ、近くに餌と水を大量に用意しながら、そんなことを口にする。
shp「ちゃんと、大人しくしとるんやぞ…ええな？」
ショッピ先輩が手をかざし、ピコちゃんにそう言葉をかけると、寂しそうに小さく鳴いて私たちの裾を加えた。
まるで、「行かないで」と言うかのような健気なその態度に、ツン、と鼻が痛くなる。
shp「……いや違うねん。捨てるんやないて。明日学校終わったらまたすぐ来るからな」
『新しい玩具も持ってくるから！』
ピコちゃんの様子に後ろ髪が引かれるも、私たちはそのまま空に飛び上がった。
ちらり、と後ろを振り返ると、ピコちゃんがいつまでもこちらを見て、鳴き続けている。それを見た私は、握っていた箒の柄を強く握りしめた。
shp「……もしピコが、俺の使い魔だったら──“絶対別れたりせん”って、少しは安心してもらえたんかな……」
『っ、先輩……』
月を見上げながら誰にいうでもなく、そうポツリと呟いたショッピ先輩に、なんて声をかければいいのか…なんて声をかけるのが正解なのか、今の私にはまだ分からなかった。
＊
──翌日、放課後
sha「今日はまっすぐピコんとこ行くんか？」
『うん、ピコちゃんと約束したからね』
tn「んじゃあ、はい。これピコが大好きなぢゅ〜る。さっき売店で買ってきたから上げたって」
『ありがとう！』
トントンたちから沢山のピコちゃんへのプレゼントを受け取り、ほくほく顔で教室を飛び出した私だったが、ふと、周りが騒がしいことに気づく。
どうしたのだろう？
そう思って、耳をすませると…
「おいおいすごいぞ！中庭にでっけぇ魔獣が侵入して暴れてるらしいぜ！」
その言葉を聞くや否や、私は思いっきり廊下を駆け出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3433人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねむ - 連載時期からずっと読んでいました。今でもこの作品が1番大好きなのでいつか更新されたらいいな〜と思い読み返しています。続編いつまでもお待ちしています。 (2023年2月14日 5時) (
レス) id: 684d7a9448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆななぁ - この作品とっても好きです！続編楽しみにしています！！！ (2022年8月7日 21時) (レス) id: e0b9b0f844 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 海の幸さん» 随分と期間が空いたお返事になって申し訳ありません。またゆっくりと更新を再開していくつもりですので、お時間がある時にでもゆっくりとまた読んでやってください。コメントありがとうございました！ (2022年7月16日 9時) (レス) @page50 id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
海の幸(プロフ) - 初コメ失礼します。自分は語彙力が無いので上手く言葉に出来ませんが、この作品が本当に大好きだという事が伝われば幸いです。通知が来る度に、はしゃぎながら読んでいました。この作品を見つける事が出来てとても嬉しいです。お体ご自愛下さい。続編楽しみにしてます。 (2021年8月3日 16時) (レス) id: 773012e340 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - ルルーシュさん» 1番！？凄く嬉しいです…ありがとうございます！のろのろと本当におまたせしていただく形になってしまう更新ですが、これからも頑張っていこうと思います！改めてありがとうございました！ (2021年8月3日 16時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蛇狐
| 作成日時：2021年3月11日 18時
