episode85 ページ38
どうやら先程の頭への衝撃は、音ではなく物理的な衝撃によるものだったようで、多分弾け飛んだ金属破片がぶつかったのだろう。
ぽたり、ぽたり、と水溜まりを作っていく赤に思わず手が震える。
ﾐｶ「…………とう、さ…ぁ」
微かに聞こえた掠れた声にハッと意識が引き戻される。ぼろぼろと涙を流し、絶望に顔を染めた少年。私を通して、誰かを見つめるその目は恐怖と後悔に染っていて、
「大丈夫、大丈夫だから」
まるで、あの時の私のようで。鬱さんに頭の傷を抑えられながら、私は目の前の小さな少年を堪らず抱きしめる。
彼の腕が服に当たらないよう、力を調節しながら彼の背中に腕を回してポンポンと赤子をあやす様に擦ってやる。
「死んでない。私は生きてる、大丈夫……君のせいじゃない」
ゆらゆら揺れる瞳を覗き込みながらハッキリと告げると、ミカエルは糸が切れたようにふっと体の力が抜け気を失った。
「ショッピさん、彼を診療所までお願いします」
sha「わ、かりました……Aさんは、」
「歩けるんで出血が落ち着いたら……」
ut「アカン、頭打ってるんやで、そんなん俺が許さんよ。俺がおぶってく」
「や、でもスーツが汚れて…」
ut「あほ、そんな心配よりまずは自分の事を心配しなさい。さ、乗って」
自分で出血箇所をタオルで抑えながら彼の背中に身を預ける。ぽたり、ぽたり、と垂れ落ちる赤い血が彼の紺色のスーツを鈍く汚す。
ut「ごめん、ちょっと揺れるな」
そう言って彼は先に行ったショッピさんを追うように駆け足で診療所へと向かった。
今になってジクジクと鈍く痛み出した頭に吐き気を覚えて鬱さんの背中に額を押し付ける。
ut「辛いん？」
「ちょっとだけ、」
ut「ごめんな、後ちょっと我慢してな」
「は…ぃ、」
血に交じってぶわりと溢れ出す脂汗。段々と目の前の背中が赤黒く染まっていく光景を見ていられずギュッと鬱さんのスーツを握りしめる。
落ち着け、大丈夫、大丈夫。
ut「やっぱ血が怖いん？」
「すみませ、」
ut「ええよ、大丈夫。着くまで目閉じとき」
「はい、」
彼の言葉に甘えて、私は額を彼の背中に押し付けながらギュッと目を瞑った。大丈夫、大丈夫、そう呟いて震えを落ち着かせる。
ut「大丈夫、大丈夫やで」
鬱さんは診療所に着くまでの間、そうやって私が欲しい言葉を優しく投げ続けた。
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蛇狐(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» ありがとうございます！自分のペースで頑張っていきます！ (2020年12月11日 16時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
#ゆー@金欠民族 - 後編決定おめでとうございます！！ばちくそにおもろいです！！ ゆっくり、ゆっくりでいいんで続き待ってます！！ これからも頑張ってください！！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: 3046ae6781 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 妖々 梅雨里さん» 仕事の都合上、更新するペースはまちまちになってしまうと思いますが、頑張ります！ (2020年9月12日 21時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
妖々 梅雨里 - 更新ゆっくりと頑張ってくださいね〜無理をしたらちょっと……ね〜。 (2020年9月12日 12時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - アズライト@pitterさん» ありがとうございます！これからもビシバシと物語を進めていきます！ (2020年8月20日 0時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年8月19日 8時
