episode59 ページ12
kr「いっぱい泣きなさい。泣ける時に泣かないと。──泣けば落ち着くから」
赤子をあやすかのように、ポンポン、と一定のリズムで叩かれる背中。
ああ、そうだ……私がぐずった時に、よくこうやってレラおじさんに落ち着くまで優しく撫でてもらってたっけ…
暖かい西日が窓から私たちを照らす。すん、すん、と鼻をすする音が静かな研究室に響く。
どれくらい時間が経っただろうか。涙も止まり、呼吸も落ち着き、残るのは少しの気恥しさ。
胸に押し付けていた顔を上げ、私はレラおじさんを見る。
ヒリヒリと少し痛む私の目元を親指で撫でると、レラおじさんは苦笑した。
kr「うん、やっぱり少し目が腫れちゃったね。まってて今冷たいタオル持ってくる」
「ありがとう…」
どっこらせ、と声を出して立ち上がったレラおじさんは、ナタリーさんが向かった部屋の方へと消えていった。
「久々にこんなに泣いたな……」
ぐっ、と腰を伸ばしながらこぼした独り言。
泣きすぎて疲れたし鼻が詰まってるし喉がカラカラだし…
──でも、スッキリした。
私は乾いた喉を潤す為に、冷えてしまった紅茶を一気に流し込んだ。
こくこくと喉を動かすたびにヒリヒリしていた喉が潤っていくのを感じた所で、ジリリリリ、と目の前に置かれた黒いダイヤル電話がけたたましく鳴った。
「レラおじさん！電話！」
消えていった部屋の方へ声をかけるも、聞こえてないのか反応がない。
私は仕方なく肩を竦め、ガタガタとベルの振動で震える受話器を手に取った。
「もしもし、すみません…先生は今──」
『あれ？もしかしてAちゃん？』
「鬱さん？」
耳に押し当てた受話器から聞こえてきたのは、つい先程カフェで出会った幹部、鬱さんの声。
一体どうしたのだろうか、と受話器を持ったまま首を捻ると鬱さんの失笑が聞こえてきた。
ut『クラレ先生に日が沈む前にはAちゃんを城に帰すよう言っといてくれへん？』
「わかりました」
ut『………もしかしてAちゃん泣いてた？』
「え、どうして…」
ut『いやー…少し声に違和感を感じで……。君の幼馴染君が心配しはるで〜』
「う……ご忠告ありがとうございます」
城に戻る頃にはこの目の腫れと鼻声は治っているだろうか……
心配そうに眉を下げるトントンを想像し、私は思わず苦笑した。
ut『んじゃ、また』
「はい」
鬱さんが切ったのを確認し、私はガチャリと受話器を置き、ふぅと息を吐いた。
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蛇狐(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» ありがとうございます！自分のペースで頑張っていきます！ (2020年12月11日 16時) (
レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
#ゆー@金欠民族 - 後編決定おめでとうございます！！ばちくそにおもろいです！！ ゆっくり、ゆっくりでいいんで続き待ってます！！ これからも頑張ってください！！ (2020年12月10日 20時) (レス) id: 3046ae6781 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - 妖々 梅雨里さん» 仕事の都合上、更新するペースはまちまちになってしまうと思いますが、頑張ります！ (2020年9月12日 21時) (レス) id: 6f471a4801 (このIDを非表示/違反報告)
妖々 梅雨里 - 更新ゆっくりと頑張ってくださいね〜無理をしたらちょっと……ね〜。 (2020年9月12日 12時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
蛇狐(プロフ) - アズライト@pitterさん» ありがとうございます！これからもビシバシと物語を進めていきます！ (2020年8月20日 0時) (レス) id: a06b5d42fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛇狐
| 作成日時：2020年8月19日 8時
