忘れたいわけじゃない

30話 ページ32

楢「あ、もう着いちゃうね」
『で…すね…』

かつて家までの時間がこんなにも長いと
感じたことなんかあっただろうか…

『あっ、ありがとうございました…//』
楢「いいの、こっちこそありがと笑」

そう冗談っぽく笑う楢崎さん…
私はここまで心臓が破けそうなくらい
バクバクしてたのに…楢崎さんは余裕そうだ……

『で、では…お気をつけて』
楢「うん」
楢「Aちゃん」
『はっ、はい！？』
楢「俺はいいんだけど…嬉しいし」
楢「でも、今度からは自分の傘に入りなね笑」
『へっ…//』
楢「風邪ひいちゃうけん、じゃーね」

にこりと微笑んで私の頭をぽんと撫で
そのまま…手を振って行ってしまった

(ば、バレてたの…！？)

楢崎さんには、全てお見通しなのだろうか…
そうして私は熱くなった顔を両手で覆った

『恥ず…かし……』

…

『ただいま』

そう呟いても返事は来ない
誰もいない我が家に入っていった

さっきまで人といたからか
いつもの事なのにやけに寂しく感じてしまう

『へんな…感じ……』

私はそのまま着替えもせずソファーに寝転んだ
意識が遠のいていく…

気がついた頃には、眠りに着いていた

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