瓜二つ【ゴールデンカムイ】 (ページ50)

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花沢勇作ページ50

兵舎、本部、どちらとも女がいなく、女に飢えた男達が集まっている。
そんな場所に投げられた私はエサと同じだ。
飢えた男達がエサを食べないわけが無い。
医務室に入り私の体を触ってくる人もいた。
遊郭に行けばいいと思うのだが、彼らの金銭面的には厳しいのだろう。

私は拒むのだが、それをよく思わない人達が変な噂を流していると善良的な軍人から教えてもらった。
噂は『本当は中央から来た諜報員』だとか『ヤマネコとして上官から飼われてる』だとか。
ヤマネコ？と思い聞いてみたが、どうやら芸者の隠語らしい。上官に飼われてる。なるほど。そういうことか。あながち飼われていることには間違いないが、ヤマネコでは無いだろう。
彼らからしたら私は所詮ただのヤマネコだろうか？

なんでヤマネコなんで言葉を軍人が知っているのだろうか

｢前に尾形百之助という上等兵がいたのですが｣

驚いた。まさか尾形がここで出てくるとは

｢その母親が芸者で、上官と子供を作ってしまったんです。それが尾形上等兵で、山猫の子供は山猫。と嫌味を言われてたかららしいですよ｣

上官？まさかあの尾形に軍人の血が入っていたとは。上官とは誰だろうか

｢上官って一体？｣

｢自害されてしまったのですが、元第七師団長花沢幸次郎中将です。こちらも日露戦争で亡くなってしまったのですが花沢勇作少尉と親子関係です｣

花沢勇作、体が冷や汗をかいた。理由はわからないが、何故か今すぐ逃げ出したい。そんな感覚を覚えた
固まってしまった私を見て彼は大丈夫ですか？と声をかけれくれた事で正気を取り戻した

彼は気を使ってくれ医務室から出てくれたが、どうも気持ちが収まらない。勇作、勇作、私にまとわりつく様に頭をぐるぐると駆け巡っている
辞めて、嫌だ、辞めて

一瞬だが人の気配を感じた。姿勢がとても良く、笑っていた。もう一度見るもそこには誰もいない。
あなたが花沢勇作ですか、と問いかける
もちろん答えが返ってくることは無いが、私は確信した。

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1人にはできるだけなりたくない。彼が怖いからだ。
いや、彼のことは怖くは無い。私が怖い。記憶を取り戻したあとの私が怖い。彼に何をしてしまったのか知るのが怖い。
そうだ。前まで来てくれた鯉登少尉は、と思ったが任務で遠くに出かけているそうだ。

誰も結局は来てくれない。
私の手の中にはあの時尾形に貰った貝殻だけが尾形と共にしたと言う証拠だった。

今彼は何をしているのだろう。