最初の記憶は彼 ページ48
一通り読み終えたあと暇なので外に出ることにした。
外と言ってもまだ外出許可が出ていないのでただのベランダのようなところに出る。
少々冷えるが落ち着いて考え事ができる。
ああ、今尾形さんは何をしているんだろうか、寒くないだろうか、ご飯はしっかり食べているだろうか、私のことを探してくれていたりして……と気づいたら考えていた。やっぱり帰りたい。一緒に居たい。覚悟を決め抜け出そうと後ろに振り返った途端に丁度、医務室の扉を開けていた鯉登？と言う男が居た。手強そうだ、
鯉登｢なんだ、そこに居たのか｣
｢はい。｣
鯉登｢この服に着替えろ、それとこの靴と帽子もだ。｣
と言われ別室に行き着替える。
妙に全てピッタリな服は動きやすく着心地が良い。
髪を結って帽子の中にしまい、鏡で身なりを確認して完了。なかなかに似合っている。
鯉登｢おお！似合っているな！さっきは、何をしていたんだ？｣
｢そうですね、考え事です。｣
鯉登｢…尾形のことか。｣
いざ面と向かってとなると何も言えない。何故だろう。
鯉登｢そんなに気になるのか？｣
｢まあ、『幼なじみ』ですから。｣
鯉登｢本当に幼なじみなのか？｣
｢嘘だとわかっていても私の記憶の最初は彼なんです。彼が幼なじみという記憶しかないんです。｣
鯉登｢そうか｣
と顔を俯け、何か考え事をしているようだった。
その後も少し沈黙が続いたが、どうやら鯉登の方が沈黙に耐えられなくなったようだ。
鯉登｢失礼した。｣
と言い医務室から出て行った。静かになってしまった医務室は孤独を感じてしまうほど音が聞こえずとても寂しく感じた
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作者名：ハムカツ | 作成日時：2023年10月16日 19時
