今更 ページ47
ウイルク、ウイルクがやはり全て知っているのだ。
父のことも、
｢でも、もういいですよ。愛されていても捨てられたことには変わりありません。今更です。｣
鶴見｢いいや、親ならば自分の愛する娘には会いたいはずだ。｣
と私の縄が解かれる。
鶴見｢鯉登少尉、Aちゃんを医務室に案内しなさい。｣
―――
久しぶりに見るAの姿はまるで別人のようだ。今までは軍帽で髪の毛を隠していたのだが、今回は髪を下ろしていて、それに着物を着ている。暴れた後に捕まったので今にもはだけそうだ。
鯉登｢ここが医務室だ。｣
と後ろを振り向くと誰もいなかった。まずい！逃げれれた。
今来た道を戻るとすぐにAの姿が見えた。着物で走りずらいのだろう。
追いついたところで着物の後ろ首の部分を掴む。
しまった、はだけかけていた事を忘れていた……。
スルスルと着物は落ちていく。幸い、帯は解けなかったので下半身は何ともなかった。
ただ、胸に巻いているさらしと背中が丸見えになってしまった。
鯉登｢ど、どげんしたんじゃそん背中ん傷は、｣
見られてしまった、いちばん見られたくないものを。
私は必死に隠し、背中を隠しすぐに着物を着直す。
｢い、今のは忘れてつかぁさい、お願いします。｣
感情的になった時に出てしまう広島弁だ。
鯉登｢……わかった。｣
逃げたことも気にならないほど鯉登は傷跡に驚いた。
忘れたくてもあの痛々しい傷は忘れられないだろう。
―――
綺麗な医務室。医務室の奥にはそのまま病室が繋がっており病室は廊下とともに長く長く続いている。
医務室は狭くも広くもなく丁度いい大きさだ。
部屋の端には机と椅子が置かれていてその横には大きな本棚が置かれており、本棚には沢山の資料と本が並べられている。
『診療録』と書かれた本がズラリと並べられている様だ。これはきっとこの軍の診療録で一人一人記録していたのであろう。
診療録の中身が気になり適当に選んだ資料をとる。
中には名前とその情報が細かく書かれていた。
すごい、こんなに細かく書かれているなんて
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作者名：ハムカツ | 作成日時：2023年10月16日 19時
