北のウォール街 ページ39
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小樽
この街は随分と栄えている。『北のウォール街』とも呼ばれているそうだ。小樽はニシンが有名と聞いたことがある。海の風と匂いがとても気持ちいい街だ。
あれから私たちはあまり言葉を交わさなかった。
ただ尾形の後をついて行くだけだった。
なにか話そうとも思わなかったが尾形はこちらの様子が気になるのかチラチラと私を見ているような気がした。
尾形はまた一瞬私を見て歩き出す。あー、お腹がすいた、歩きすぎて疲れたと弱音を吐きたかったが吐ける雰囲気では無いので言うことが出来なかった。まあ、言わなくて正解だ。そもそもそんなことを考えている暇ではないだろう。
すると尾形は店の前で止まった。店には『蕎麦』と書かれていた。私の心を読んだのか？それとも尾形が休憩したいだけだろうか…。店に入る尾形にまた後をついて行った。
店にはほんのりと蕎麦の匂いが香っている。
｢いらっしゃい。好きなところ座りな｣
尾形｢お前は何を食べるんだ。｣
｢え、えと、尾形さんは何を食べるんですか？｣
まさか話しかけてくるとは思わず驚いてしまった。
どうやら痺れを切らしたのは尾形の方だった。
尾形｢決まってない。｣
｢じゃあ2人でにしんそばにしませんか？｣
壁にぶら下がっている札にメニューが書かれており、『ニシン蕎麦 三銭』と書かれている。三銭か…。今の私たちにはどうも高く感じてしまう。貧乏になったものだ。
尾形｢あぁ。｣
｢すいませーん。ニシン蕎麦2つお願いします。｣
｢はいよ！｣
―――
｢小樽に何しに来たんですか？｣
尾形｢ただの観光だ｣
｢嘘つかないでくださいよ、別に何か企んでいることがあるのでは？｣
尾形｢はっ。やっぱり勘がいいな。全てお見通しか。｣
｢はい！ニシン蕎麦2つね。｣
蕎麦は焦げ茶色の出汁に浸っている。その真ん中には四角く切られた大きなニシンが置かれている。にしんは脂が多いと聞くがこれだけ見ると脂感はあまりなく美味しそうに見える。
｢いただきます｣
スルスルと麺をすすり、ニシンを一緒に頂く。
美味しい…。美味しすぎる。
尾形も気に入ったのか食べ続けていた。
これで三銭はお得だ。また機会があったら尾形と一緒に来ようと思った。
｢あぁ、三銭今出しますね｣
尾形｢いや、いい。俺が払う｣
｢いや、悪いですよ、払います｣
尾形｢いいって言ってるだろ、早く財布をしまえ｣
｢だって…｣
｢毎度あり、また来てくれよ｣
と尾形が店を出る。私は慌てて尾形を追いかける
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作者名：ハムカツ | 作成日時：2023年10月16日 19時
