価値と意味 ページ38
翌日Aは目を覚ました。
相当魘されていたようで、尾形には心配をかけてしまったようだ。
｢看病ありがとうございました。｣
尾形｢起きるな。まだ寝てた方がいい。｣
｢いいえ、聞きたいことがあるんです。｣
尾形｢…はぁ｣
｢私が父の事を知る理由はなんですか、｣
尾形｢会ったことの無い父親のことを少しでも知りたいからじゃないのか？｣
｢親に愛されていないのに？、愛されていないのに探る必要なんてないですよね？尾形さん、隠さないでください。｣
｢価値が分かりません。愛のない父のことを調べて何になるのか、その『価値と意味』は何ですか？｣
尾形｢ははっ。やっぱりお前は勘がいいな。そこだけは記憶をなくしても変わらないようだな。俺は勘のいい女は嫌いじゃない｣
｢本当に教えてください。｣
尾形｢……この北海道には、アイヌの奴らが集めた金塊が埋まっているんだ。それを見つけ出すためにみんながお前を欲しがっているんだ。｣
｢なんで私を、｣
｢この金塊を隠したのがウイルク。今は網走監獄にいる。そしてお前の父親はウイルクと仲が良かったそうだな。あとは鶴見中尉の上司だったらしい。｣
｢ウイルクまでは知っている。だけど金塊って、｣
尾形｢なんだ、知らなかったのか？｣
｢みんなお金のために私を捕まえようとしているって
こと？欲深さのせいで私の命は、｣
｢鶴見中尉？誰？中尉って、なんで、｣
尾形｢落ち着け、まだ続きがある。｣
尾形｢お前の父親はのっぺらぼうと相当仲が良かったらしくな、のっぺらぼうから金塊の事を聞いているという噂がたったんだ。この噂が駄目だったんだ。｣
｢私の父は、｣
尾形｢お前の父親は第七師団に殺された。その鶴見という男に。｣
｢なんで、｣
尾形｢『造反者』だからだろうな。親友のウイルクを取るか、部下達を選ぶか、ウイルクを選んだお前の父親は部下たちに諜報員だとすぐにバレ、殺された。それとも、お前が欲しかったからだろうか、｣
｢…訳が分からない。｣
尾形は話を逸らすかのように行くぞと言い着々と荷物の準備を進めている。私はまだ何が何だか整理出来ておらずただ下を向いていることしか出来なかった。
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作者名：ハムカツ | 作成日時：2023年10月16日 19時
