フラッシュバック ページ19
｢外の空気吸ってきます｣
尾形｢すぐ帰ってこいよ｣
ゆっくり頷き外へ出る。そこそこ良い旅館らしく庭には錦鯉が泳いでいた。鯉…。何だか頭が痛くなったので星を見ようと顔を上げると満月。月…。またクラクラとするので横を見ると高そうな鶴の置物が置いてあった。鶴…。もうダメだ。どこを見ても頭が痛い。Aは早歩きで部屋へと戻った。
尾形｢おお、速かったな｣
｢頭がクラクラしまして、｣
尾形｢頭を打っているんだからな。考え事はやめた方がいい。｣
｢はあ、｣
尾形｢大丈夫だろ。そのうち治る。それと、お前に言う事があるんだが｣
｢言うこと？｣
尾形｢軍人にあった時はすぐに逃げろ。逃げれなかったら殺せ｣
と以前Aが軍で使用していた銃剣を差し出す。
｢なんで…｣
尾形｢お前の命を狙っているからだ。もし捕まったらどうなるか分かるよな？｣
｢それは、｣
尾形｢だから必死で戦え。｣
｢でも人殺しなんて｣
尾形｢今更なんだ。お前はもう取り返しがつかないぞ｣
｢どがいな事ですか｣
尾形｢思い出せ。お前の父親を殺したのは誰か？｣
｢私の父親を殺したのは｣
尾形｢早く言えよ｣
｢父は…｣
と息が荒くなる
尾形｢はっ…冗談だ。まあでも軍人から逃げろってのは本当だがな。｣
｢そう…ですよね、また外へ出てきます｣
庭ではなく旅館の外へ出て少し歩いたところに山のような場所があり、人気がなく頭を冷やすにはピッタリだった。
Aはあの瞬間とてつもない恐怖を感じた。記憶をなくす前の私は一体何者なのか。取り返しがつかないと言うのはどういう事か？なぜ軍から逃げなければならないのか？頭が混乱しているがさらに痛くなるので無理やり落ち着かせる。しかしどんなに考え事をやめようと思っても頭の痛さは増していくばかりだった。ううと唸りながら頭を抱え座り込んでしまう。
フラッシュバックというものだろうか、完全には思い出せないが、父親を思い出した。父親の言っていたこと全てを思い出した。だがまだ顔や声はきちんと思い出せない。｢死ぬなら大切な人を守って死ね｣と言う言葉が頭をくるくると回っている。｢私の大切な部下の…アイヌの…｣とどんどん頭に話が流れ込んでくる。
さらに頭が痛くなる。脳みそが引っ張られているような、ぐいぐいと引っ張られているような感覚だった。
その時
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハムカツ | 作成日時：2023年10月16日 19時
