エル・ヴフ・ヴィマナ ページ3
悪魔の住処。
最後の砦。
あなたの居場所はここにある。
───────
【復元記録】
当時、それは世界初の島船だった。
国を背負えるほどの巨大な船を作ろうと、そう言う構想自体はいくつかあった。国を細分化し、大型生物の背に乗せて移動する国家も存在はした。しかし大地を船へと変えたのは、このヴィマナが初めてのことだ。
島一つを兵器へと改造したのも、これが最初で最後のことである。ゆえに〈悪魔の住処〉と呼ばれ、出現時には地を揺らす低い低い汽笛が鳴り響いたと言う。ヴィマナと敵対した者達は、この音に酷く怯えた。また恐怖のあまり、水平線に島の幻覚を見る者もいたらしい。
しかし実際は不可解な点が多い。
確かに存在はしたようだが、その後どこに消えたのかは誰も知らない。あれだけ巨大な島船は忽然と姿を消したっきり、今なお発見されていない。ヴィマナについて戦神の船だったのだと話す者もいれば、勝利の前触れだと信じ続ける者もいる。海域によっては〈我らが祖竜の住まう島〉と崇め、毎日祈りを捧げる程だ。ご存知の通り、今や正徒教会に並ぶ宗派の一つ〈祖竜信教〉となっているのである。
大航海時代が幕を閉じて以降、海へ繰り出す理由の筆頭が『ヴィマナを見つける』こととなった。海賊旗を模した旗を掲げ、若者達はあの危険なグランドラインに漕ぎ出すのだ。
とは言え、昔ほど危険ではなくなったと話す専門家もいる。無法者と呼ばれるような輩はめっきり姿を消したし、各国は遥々海を越えてやって来る若者達を歓迎してくれる。航海技術も向上し、指針も安定するようになったようだ。
もしかすると今時代、名を轟かせている船団のどれかがヴィマナを見付けるかもしれない。そうなれば世紀の大発見であり、祖竜信者達は悲願の聖地回収を成し遂げる事になるだろう。
(カナリア通信社、とある特集記事より)
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