第一話 夜明け前の火柱 ページ5
「現地ではドフラミンゴさんの船が確認されています。本人の姿も視認済みですが、騒ぎは起こしていません。」
「もう嗅ぎつけたか…あれに政府と革命軍が関わるとなれば、支部の将校には酷やもしれん。すまんがハイン、この一件は任せても良いか？あいつには大人しく帰れと伝えてくれ。無理はしないようにな。」
こくりと頷いたハインは元帥室を出ると、広くて長い廊下を歩いて行く。等間隔に並ぶ窓は開け放たれ、訓練場の様子がよく見えた。
夏風に、ハインの腕にかけられた蛾の目模様の腰布がふわりと揺れる。それは差し込む木漏れ日に迷彩柄となり、行き交う海兵の中に目立つことなく溶け込んだ。腰布には太さが様々な線が並行して幾本も引かれ、細かなまだらが縁に散らばり、それらの上には蛾の羽にあるような眼状紋が置かれている。茶や灰、深緑などの地味な色合いをした腰布は、遠目からは風変わりな迷彩に見えた。
ハインが自室のドアを開ければ、夏風が部屋を通り抜け、鉄風鈴がチリンと鳴った。
中将相応の広いワンルームは、全体的に古風アジアンと呼べるような家具類で揃えられている。緩やかに部屋を仕切る深い赤の間仕切りには、倒福飾りのついた扇子が掛けられ、飾り棚には白磁の花瓶とガラス細工の金魚、若草色の香炉や番茶器が並んでいた。リビングの窓辺には落ち着いた黒色のラタン家具に、海図の入った木箱が幾つか。窓の外には庭に続くウッドテラスがあり、天蓋のようなサンシェードが強い日差しを遮る。
ハインは、クローゼットから黒い皮製のウエストポーチを取り出し、そのベルトに剣帯とホルスターを付けると短剣一本と拳銃一丁を固定する。ポーチにはジャヤ近海の海図や、小型通信機器、最低限の弾倉と医療セットなどをきっちりとしまった。
そうして蛾の目の腰布をくるりと巻き、彼女は花の咲く庭へ出る。
ハインの庭は部屋よりも広く、多種多様な花が見られた。庭を囲むように植えられているのはハイビスカスで、奥にはサルスベリが濃いピンクの花を付けている。その根元に作られた花壇にはラベンダーが育ち、爽やかな香りは室内にまで届いた。バルコニー近くには植えたばかりの沈丁花と、グリーンカーテンにするのだろうフウセンカズラが成長中だ。
出掛けるには良い天気。
忘れ物がないか確認したハインは、そのまま庭の裏口から外へ出ると、散歩にでも行くかのように港へと歩いて行った。
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (
レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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