在りし日を思う/kn ページ15
照りつける太陽から逃げるように、石段を駆け上がり木陰に入る。そこまで涼しいとは思えない、少しマシ、程度の暑さ。でも、ひんやりとした石畳の上は悪くないらしい。
「コネ先輩」
「ん？……なんや、またお前か」
ひとつ上の先輩は、そこで本を開いていた。うっすら汗をかいている。こんなところで読むからだ。家とか図書館とか、もっと涼しい場所はあるはずなのに。
「物好きやな」
先輩こそ。
私は先輩目当てだから、家じゃなくてここに居てくれるのはありがたいけど。
夏休みがはじまったばかりのとき、ここに上っていくコネ先輩を偶然見かけたのがきっかけで、私もここを覗くようになった。
「暑くないですか」
「暑いにきまってるやん」
「ですよね」
先輩はあまり家に居たくないらしい。だからといって夏休みに学校へ行くのも嫌だからと、暇なときはここで本を読んだりゲームをしたりしている。
私も家に居たら息が詰まる。だから先輩には親近感も覚えていて、つい足を運んでしまう。
「ちょうどええわ、これで冷たいもん買ってきてくれ」
「来て早々パシられるんですか私は」
「なんでもええから」
「偶然ですけど、私もう冷たいもの持ってるんですよ」
保冷バックからコンビニの袋を出して見せると、先輩は本を閉じた。
「流石一流のパシりはちゃうな、自ら予想して来るとは」
「別にそういうつもりじゃないですけどね……どっちがいいですか？」
「こっち。いくら？」
「いいですよ、今度は先輩が買ってきてくれたら」
またここで先輩とアイスを食べる口実になればいい。その方が嬉しい。
「お前いつ来るかわからへんやん」
「たしかに」
「俺も毎日おるわけやないし、……ん？お前もしかして二本食う気やった？」
「ちがいます〜！わざわざ先輩のために買ってきたんです」
「居らんかったら？」
「二本食べてた」
「やっぱりそうやん」
先輩はそういうと、大きな声で笑った。
その底抜けに明るい笑い声が好きだった。その明るいイメージに反して、真剣な顔で本に目を落とす横顔も好きだった。
家族に対して私と同じように、なにか思うところがありそうな、不意に見せる影のある表情も好きだった。
「A！これハズレやん！気合い入れて選ばんからやろ」
「無茶言うな！？」
そしてなにより、こうやって、自然に話せる空気が大好きだった。
「見て先輩、私の当たり」
「ホンマや！」
屋外でこうやって先輩と話していると、私は息が出来るんだ。
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しをじゃけ(プロフ) - 夢喰いbakさん» 返信遅れまして申し訳ありません...！そう言っていただけるととても嬉しいですし、励みになります！全ての作品に魅力があるのが伝わってとても嬉しいです〜！^^風邪引いちゃいますので服は着てください(笑) (2020年7月18日 2時) (
レス) id: df6ceccb61 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰いbak - 素晴らしい企画を発案、実行、投稿して頂き、誠に…まっこっとっに！ (おふざけ)ありがとうございます!!!! 全ての作品に楽曲の素敵さや儚さが詰め込まれていて心にキました…。第二弾！全裸待機していますよ…!!(笑) (2020年7月15日 0時) (レス) id: 582bb38728 (このIDを非表示/違反報告)
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