上から落ちて、下から落ちて (ページ22)

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SEvEnteeN ページ22

Aは家の扉を開ける。
「ただいま...」
部屋はしんとして物音ひとつしない。誰もいない部屋の中で、靴の踵を綺麗に揃えリビングに入っていく。
靴箱の上の写真たてには、制服を着たAが幸せそうに写っていた。

服を着替えると真っ先に冷蔵庫を開け、スポーツドリンクを出す。そのままリビングへ向かうと、テレビのスイッチを入れる。テレビ画面にアイドリッシュセブンのCMが写る。
「あ、これのCMか...」
ペットボトルの蓋を開け、勢いよく飲む。
「っぷはぁー！」
最後まで飲みきると独り言を言う。
「...今日、この人たちとおんなじステージに立ったのか...」
Aは空になったペットボトルのラベルを剥がし、手で弄んだ。すると、ふと、楽屋の映像が頭の中を駆け巡る。
「...確か、この人たちと会ったのよね。すっごい楽しそうだったなぁ。」
そして立ち上がり、ペットボトルを洗いに行く。流水の音でテレビの音がかき消される。蛇口を捻り、水を止めると徐々にテレビから黄色い歓声が聞こえきた。Aは気になり、リビングへ戻る。そこではあるバラエティー番組が流れていた。
「ということで、今日はアイドリッシュセブンの六弥ナギさん、和泉三月さん、そして、二階堂大和さんにお越しいただいています！本日はよろしくお願いします！」
「よろしくお願いしマース！」
「よろしく！」
「よろしくお願いします。」
テレビの前に立っていたAはテレビに目を向けながらソファに腰かける。番組は７人の寮の話で盛り上がる中、話題は家族の話に移る。
「皆さんは兄弟はいらっしゃるんですか？」
「俺は弟の伊織だけだな」
「ワタシは兄が１人います。」
「二階堂さんは？」
話題を振られてた大和は言いずらそうに口を開く。
「あ...これテレビで初めて言うんですけど、俺には実は妹がいたんです。」
「いた、というのは...」
「あ、死んだとかじゃなくて！...何て言うんでしょう。俺、ほとんど家出同然だったので、家に帰ってなくて...だから、」
大和の顔がアップになる。すると突然Aはチャンネルを変えた。
リモコンを握りしめすぎたせいなのか、リモコンからはミシミシと音がする。
「...あ」
我を取り戻したAは震える手を無理矢理リモコンをそっと離す。
「...何でこの人を見るとこんなに苦しくなるの？...」
ソファへ寝転がると、クッションを抱く。何故か彼女の目から涙が溢れていた。何が原因なのか分からないAはそのまま静かに涙を流した。