上から落ちて、下から落ちて (ページ21)

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SixTEEn ページ21

真っ白空間に彼女は立っていた。
ふわふわして心地いい...
しかしその瞬間、急に足元が崩れ、真っ暗な闇へ落ちていく。
悲鳴をあげながら、落ちていく途中で様々な断片が見えるー

「あの子、あの人との子なんだって」
「可哀想に...」

やめて...やめてよ...
可哀想なんかじゃない。彼らは幸せなんだ、

「こいつ、アイツの子供らしいぜ！」
「へぇー、結構複雑だね。家族間、大変そうだなぁ」

違う！アイツ(・・・)は家族じゃない！
家族なのはお母さんとお兄ちゃんだけ...！

「ごめん...家出てく」
「そんな...私たちをどうするの！？」

...また、そうやって私たちを置いてくんだ。

アイツと何ら変わりはない。

「お兄ちゃんなんて嫌い！もう、もう、２度とお母さんと私の前に現れないで！！」

お兄ちゃん？お兄ちゃんって誰？

私は、２度と会えない人。
けど、私(・)は、会うかもしれない。

私(・)は？

遠くから声が聞こえる。

「だいちゅきー」
「はいはい、俺もだいちゅきですよー」

「頑張って！応援してるから！」
「おう、お前もバンド頑張れよ！」

なに、これ？いつの記憶？誰の記憶？

私の記憶...かな？
決して、あの人を、信用するな、

「...っはぁ！」
突然起き上がった彼女を見て、隣の男が驚いた。
Aは段々意識がはっきりすると、隣の男が響で、ソファに寝かされていたのが分かった。
「A！大丈夫か!？」
「...こ、こは？」
Aはブランケットをはずした後、ゆっくり部屋を見渡し響の方を向く。
「事務所だよ。雑誌の取材の後、車で寝ちゃって。さすがにそのまま家には帰れないから、こっちへ来てみたんだけど...大丈夫か？変な夢でも見たのか？」
響は心配そうにAを見る。Aは首を捻ったが、
「ううん、何でもないです...忘れちゃった」
と言った。響は怪訝そうに見たが、すぐに表情を崩して笑った。
「困ったことがあれば、言ってよ」
「はい」
それを見ると響はスマホを片手に立ち上がった。
「ちょっと俺、社長に会う用事があるから、横になってていいよ」
「...はい」
ブランケットを肩までかけるとAはもう一度横になった。
響が部屋を出ていき、扉が閉まる音が聞こえた。
その音を聴いたAは目を閉じ呟く。
「ごめんね...また、出ちゃったかな？...」
「ううん、私は平気...そう、そんなことがあったのね...」
誰もいない部屋の中でAが誰かに向かって話す声だけが聞こえた。